サッカーJ3・FC琉球が待ち望んできたJリーグ規格のサッカー専用スタジアム建設計画が、いよいよ本格始動しました。新たなスタジアムは那覇市の奥武山公園内に整備される予定で、2031年度の供用開始を目指し、県と市が連携して事業を推進しています。ピッチとの距離が近く臨場感に溢れる専用スタジアムの整備は、FC琉球のJ1昇格という悲願を後押しするとともに、観光振興や地域活性化、DX推進といった多岐にわたる効果が期待されています。

FC琉球の悲願を後押し!「臨場感に欠ける」現スタジアムの課題

FC琉球は2018年にJ3で初優勝を果たし、翌2019年にJ2へ昇格しましたが、2022年にJ3へ降格し、現在は再び上位リーグを目指しています。
ホームスタジアムの沖縄県総合運動公園陸上競技場(沖縄市)は観客席約1万人を擁し、長年にわたり沖縄のサッカーや陸上競技を支えてきた歴史ある施設です。しかし陸上トラックを備えた多目的型のためピッチとスタンドの距離が遠く、臨場感に欠ける点が指摘されています。

Jリーグのクラブライセンス制度ではJ2は収容人員1万人以上、J1は1万5000人以上に加え、観客席の3分の1以上を屋根で覆うこと、天然芝ピッチ、ナイトゲーム用の高照度照明、VIP席や報道席の整備などが求められています。Jリーグは2026年1~6月の特別シーズンに向けたライセンス交付を発表し、FC琉球にJ1ライセンスを付与しましたが、同競技場は観客席1万122席のうち屋根付きが64席のみで基準を満たしていません。

ゆいレール奥武山公園駅 (PIXTA)

当初1万人規模から、増改築により2万人程度へ拡張を想定

こうした中、県と那覇市はスポーツコンベンションの推進や観光振興、地域活性化など幅広い効果を見据え、那覇市中心部の奥武山公園に新スタジアムを整備する方針を決定しました。建設予定地は、ゆいレール奥武山公園駅から徒歩3〜5分、那覇空港からもわずか3駅とアクセスが良く、国道331号にも近い好立地です。
新スタジアムはまず1万人規模で整備し、将来的には2万人規模まで段階的に拡張できる計画です。全観客席を屋根付きとし、VIPラウンジやバリアフリー設備を完備。天然芝ピッチにナイトゲーム用の高照度照明を備え、日本代表戦やAFC(アジアサッカー連盟)主催試合にも対応可能な環境を整えるということです。

当初整備の対象エリア

県民と「ともに育てる」スタジアムへ

この新スタジアムは、試合のない日も県民や観光客が訪れ、飲食・物販・展示を楽しめるよう、コンコースの開放やミュージアムの設置、沖縄らしい植栽の活用などにぎわいの拠点としての機能を重視するよに取り組んでいくとしています。

イメージパース 当初1万人 段階整備で2万人収容へ

住民と一緒にスタジアムをつくるため、まずは意見交換などが行われています。

2025年7月には、奥武山公園で住民説明会が開かれ、騒音や交通渋滞、周辺環境への影響を懸念する声が上がりました。さらに8月には小学生3人を含む23人が参加した第1回ワークショップが沖縄県体協スポーツ会館で開催され、「沖縄らしいスタジアムのあり方」や「試合のない日も賑わう仕組み」などをテーマに意見が交わされました。

また、8月29日には那覇商工会議所ホールで、有識者委員会が開かれました。委員からは「スタジアム単体ではなく奥武山公園全体や国場川沿いのまちづくりと連動させるべき」「周辺住民だけでなくより広い県民を対象とした説明会が必要」「子どもや子育て世代が日常的に利用できる施設にすることで交流人口を増やすべきだ」といった意見が出されました。さらに、川沿いの景観を観光資源として活かしつつ観光公害を防ぐことや、整備効果を数値で検証するためのKPI(重要業績評価指標)・KGI(重要目標達成指標)と継続的なモニタリング体制の重要性も指摘されました。
県はこうした意見を踏まえ、2025年度内に計画を策定し、民間事業者を選定する予定で、2031年度の供用開始を目指すとしています。

観光・経済・DX推進!沖縄が期待する多岐にわたる事業効果

この事業においては、スポーツ振興や観光振興に加え、地域活性化、社会貢献、人材育成、DX推進など、幅広い産業にわたり効果を波及させることが期待されています。

沖縄県とFC琉球の「夢のスタジアム」計画は、単なる競技場建設に留まらず、地域の誇りとなる「ウェルビーイングの拠点」を目指しています。2031年度の供用開始に向け、今後もワークショップなどを通じて県民の意見を取り入れながら、計画は進められます。悲願のJ1昇格を見据えたFC琉球の挑戦と、奥武山公園全体が生まれ変わるこの壮大なプロジェクトの今後に注目が集まります。

(写真:沖縄県、PIXTA)

鉄道チャンネル編集部
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