小田急線の利用者のなかには「あれ? 駅員さんの制服が変わった?」と気づいた人も多いのではないでしょうか。2026年6月1日から、小田急電鉄はアルバイトを含む全駅係員の夏制服として、ユニクロの「エアリズムコットンカノコポロシャツ」を本格導入しました。年々厳しさを増す猛暑のなか、私たちの安全で快適なお出かけを支える鉄道会社の最前線では、どのような熱中症対策が行われているのでしょうか? 同日開催されたユニクロの「適材適暑アカデミー」のレポートとともに、現場のリアルな取り組みと、夏制服の気になるデザインを紹介します。

ユニクロが提唱する「適材適暑」とは?

株式会社ユニクロ ジャパンマーケティング部 部長 古宿瑠美氏

ユニクロ六本木ショールームでは、株式会社ユニクロ ジャパンマーケティング部 部長の古宿瑠美氏から、ユニクロの猛暑対策について説明がありました。

「適材適暑アカデミー」より、観測史上最も暑かった2025年の夏

2025年は観測史上最も暑い夏でした。平均気温は年々上昇しており、気象庁は最高気温40度以上の日を「酷暑日」 に定め、暑さに警戒を強めています。2026年も厳しい暑さになることが予想されますが「暑さ」にはさまざまな種類があります。気温の高さや湿度、日差しの強さなど様々な要素が影響していますし、屋内か屋外か、移動中などシーンによっても人々が感じる暑さは変わってきます。

「適材適暑」イメージ(画像:ユニクロ)

多様な暑さに対し「1着の服だけで快適に過ごすことが難しくなっている」と古宿氏。そうした考えからユニクロは、新しい服選びの考え方として「適材適“暑”(てきざいてきしょ)」を提案。その時々の暑さや環境に合わせて、素材・機能・デザインを賢く選び、衣服の力で快適さをコントロールするという、新しい服選びの基準です。
熱気や湿気が多いキッチンや、汗や蒸れが気になる就寝時、外出時の駅のホームや車の運転中には強い紫外線が気になりますし、外出先から屋内に入る際は冷房による寒暖差に注意が必要です。こうした様々な状況に応じて、最適な機能をもつ衣服を選ぶことが大切です。

熱中症予防声かけプロジェクト実行委員長/救急専門医 三宅康史氏

「適材適暑」は、暑さ対策の専門家で熱中症予防声かけプロジェクトの実行委員長でもある、救急専門医の三宅康史医師が監修。医学的知見をもとに、暑さの特徴やシーンに合わせた気をつけるべきポイントを整理。「適材適暑」なコーディネートと着こなしを提案しています。

向かって左側のコーディネートがキッチン、右側がドライブ用のおすすめコーディネート

例えば、キッチンは狭いところに熱源があり、熱気も湿気も気になる場所。速乾性がありさらりとした肌触りが人気なエアリズム素材のブラトップと、通気性のよいカーディガン、足元はリネン素材のショートパンツの涼やかな着こなしがおすすめです。
ドライブ中はさまざまな方角からの日射が避けられないため、UV対策と遮熱対策が必要。また、エアコンの風は前方の席ほど効きがよく、座席による温度差が生じます。そこで、エアリズム素材かつ動きやすいウルトラストレッチ素材を使ったワンピースを着用し、UVカット機能のあるパーカーとサングラス、ハットを組み合わせるコーディネートが提案されました。

すべての駅係員を対象に「エアリズム」ポロシャツを導入

小田急電鉄株式会社 旅客営業部 課長 安藤美智子氏

働く現場での暑さ対策に注力している企業の代表として、小田急電鉄株式会社 旅客営業部 課長 安藤美智子氏が登壇。駅での猛暑対策について「エアリズムコットンカノコポロシャツ」の夏制服を導入した経緯などを紹介しました。

小田急線の特徴

小田急電鉄は全長120.5キロ、70駅を擁する小田急線を運行。2026年5月時点で社員約950名、アルバイト約320名、合わせて約1,300名の駅係員が勤務をしています。駅係員の制服は元々、激しい動きでも耐えられるようにしっかりとした素材が採用されていましたが、生地が厚く、特に女性はシャツの上にベストを着用することが多いため、近年の厳しい暑さのなかでは制服の着用自体が負担となっていました。

これまで行ってきた小田急電鉄の暑さ対策
駅係員はホームなど屋外で作業をすることが多いため、これまでもさまざまな暑さ対策を実施してきました、例えば、業務中に水分や塩分を積極的に補給するよう推奨したり、空調服や保冷剤を内蔵した冷却ベストを配備したり、制帽の着用を省略する取り組みも実施してきました。

「適材適暑アカデミー」会場に展示された小田急電鉄の夏季のポロシャツ制服。カラーはネイビーとライトブルーの2色があり、駅係員の好みで選ぶことができます

さらなる取り組みとして2025年に導入したのが、ユニクロの既存製品であるエアリズム素材のポロシャツを制服仕様にカスタマイズした「エアリズムコットンカノコポロシャツ」です。昨年度から全線の正社員を対象に導入を実施。駅係員の身体的負担を軽減し、安全かつ安定的な業務の従事を可能にするなど有効性が実証されたため、2026年6月1日から着用の対象を、アルバイトを含む全駅係員に拡大しました。

胸元のブランドマーク(写真左)と袖にデザインされた「もころん」

「エアリズムコットンカノコポロシャツ」は左の胸元に小田急のブランドマーク、袖には小田急電鉄の子育て応援キャラクター「もころん」をプリント。駅係員にも、お客さまにも愛着を持ってもらえるデザインです。

【参照】小田急の子育て応援マスコット「もころん」お披露目 ロマンスカーミュージアムで初のお出かけイベント(※2023年10月掲載) https://tetsudo-ch.com/12914388.html

「エアリズム」ポロシャツ導入の背景

エアリズムの商品を愛用する駅係員を紹介するポスターを掲出

「エアリズムコットンカノコポロシャツ」は、小田急グループの商業施設にユニクロが多数出店しており、ユニクロ商品を愛用する駅係員を紹介するポスターの掲出や、もころんのTシャツやトートバッグといったユニクロとのコラボアイテムの販売など、企業間の親しみが深かったことが導入を後押ししました。

「もころん&GSE」Tシャツと「もころんとロマンスカー」トートバッグ

速乾性に優れた「エアリズム」という商品の存在や、法人向けの一括購入サービス「UNIQLO UNIFORM」を活用できることも決め手となりました。

実際に着用した駅係員の反応は?
駅係員の反応は非常に好評だと言い「涼しくて快適」「さらさらしていて肌触りがいい」「洗濯をしてもすぐに乾く」「アイロンが必要ない」といった声が届いています。同じ交通業を担う同業他社やグループ会社からの問い合わせも多く、グループ会社のなかには既に導入した会社もあると言います。

駅係員のリアルな着用感は?

代々木八幡駅で「エアリズムコットンカノコポロシャツ」を着用して業務にあたる駅係員・サービス係の永渕夏帆さん

第二部は、小田急電鉄の代々木八幡駅へ移動。ホームでは、爽やかな「エアリズムコットンカノコポロシャツ」を身にまとった駅係員が、きびきびと業務にあたっている姿が印象的でした。

小田急電鉄本社の木梨卓哉氏(写真左)と、駅係員・サービス係の東山﨑翼さん

実際にユニクロのポロシャツを着用して勤務する駅係員・サービス係の東山﨑翼さんからは「速乾性が高く汗が乾きやすいため、とても着心地がいいです。ストレッチ性があり動きやすいところもいいですね」という声が。

小田急電鉄本社の木梨卓哉氏によると、以前はネクタイや上着の着用などに関するルールが細かく指定されていましたが、近年は柔軟化を進めており、制服のなかから状況に合わせて着用するユニフォームを選びやすくなっているとのこと。「エアリズムコットンカノコポロシャツ」の着用期間は6月1日から10月31日まで。ポロシャツと従前の制服のどちらを着用するか、駅係員の判断で決めることができます。

鉄道業界に「機能性制服」の波が広がる!?

これまで鉄道会社の制服といえば、フォーマルさや規律を重視したネクタイ着用のスタイルが主流でした。しかし、ホームや改札口といった外気の影響を強く受ける過酷な環境で働く駅係員の健康を守ることは、結果として輸送の安全や質の高いサービス提供に直結します。

快適で作業性も高まった「エアリズムコットンカノコポロシャツ」の夏制服

航空業界などでも制服のカジュアル化や機能性重視へのシフトが進む中、小田急電鉄が「エアリズム」を夏制服に全面採用したことは、鉄道業界におけるワークウェアのあり方に大きな一石を投じるものです。現場の快適性を追求することが、巡り巡って私たち利用者の「安心・安全な旅」を支える基盤になるという視点は、これからの鉄道・おでかけシーンにおいてますます重要になっていくでしょう。

ユニクロが提案する「適材適暑」の視点と、小田急電鉄の現場での実践は、これからの厳しい夏を乗り切るための大きなヒントになりそうです。皆さんもこの夏、小田急線でお出かけや旅行をする際には、自身の快適なコーディネートを選ぶとともに、駅員さんの涼しげな「エアリズム」制服や、袖の「もころん」にもぜひ注目してみてくださいね。

文・写真:斎藤若菜

(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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