7月18日、嬬恋村での仕事からの帰り道。新橋での要件を済ませ、芝浦ランプから首都高1号羽田線で再び帰ろうとしたときでした。

ウチのポンコツ車の向きをぐるっと変えるために、Googleマップが示した経路が、高輪ガード(高輪橋架道橋)を経る道でした。高輪ガードと聞いて「ああ、あそこか」と思う人は、電車好きか、タクシー運転手か、地元の人か……。

高輪ガードは、国道15号(第一京浜)の高輪大木戸跡交差点付近から、海側の旧海岸通へとつながる一方通行路。高さ制限は1.5m。背の高い人は、前かがみに歩かなければならないほど低い道です。

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ガードの上は、山手線・京浜東北線・東海道線・新幹線をはじめ、そのまんなかにあった田町車両センターの車両基地跡もあります。

1.5mという高さは、ちょうどタクシーのルーフ上のランプ「行灯」が、ぶつかるかぶつからないかというギリギリのラインで、天井部分を見ると、その行灯が接触したとみられる傷が複数走っています。

この高輪ガードで行灯を壊さないようにと、東京の大手タクシー会社の一部は、行灯の頭部をカットしたタイプを載せるクルマを走らせています。

嬬恋村の仕事場を往復し、500kmほど走ったこの日、前を走る大宮ナンバーのタクシーが高輪ガードの手前で停まっていました。後続の品川ナンバーのタクシーがプップーとクラクションを鳴らすと、大宮ナンバーの運転手が降りてきてこう聞いていました。

「これだいじょうぶ? 当たらない?」

「当たらないよ。だいじょうぶだから!」と伝え、客を乗せてる品川ナンバーの運転手は「行ける。行ける」と合図します……。

実はこの高輪ガード、品川エリアの大規模再開発とともに姿を消します。「ガード下1.5m 路面段差あり 徐行せよ」「降雨時の冠水に注意せよ」といった看板と、頭上を行く列車の足音を聞きながら、不思議な感じで歩けた200mは、品川新駅などの登場にあわせて消滅――。

嬬恋村で信号のないのどかな道をひたすら走り、その3時間後に都心で“高輪ガードあるある”に遭遇。変わらない風景、変わる街。慣れないタクシードライバーと、先を急ぐ地元運転手がやりとりするこんな光景も、あとわずか。