MaaSアプリ「WILLERS」のQRコード決済サービスで丹鉄の列車やバスに乗ってみた

2020年2月10日、京都丹後鉄道沿線地域MaaS推進協議会によるQR実証実験が行われました。
実験に用いられたのはWILLER株式会社の提供するMaaSアプリ「WILLERS」です。実験内容は2月のアップデート新たに搭載された「QR決済機能」(「即時決済利用」および「事前予約利用」)を利用し、京都丹後鉄道と丹後海陸交通のバス、天橋立ケーブルカー、天橋立遊覧船を財布なしで乗り継いで行くというものになります。
「即時決済機能」はスマートフォンの端末にQRコードを表示させ、その画面を列車やバスの乗降時に読み取り端末にかざすことで即時決済を可能とするもの。都心部で電車やバスを交通系ICカードで乗り継いでいると「何がどう目新しいのか?」となるところですが、実は「区間運賃に対応したQRコードによる即時決済サービス」は日本初の試み(※)なんですね。
「事前予約利用」の方はさほど珍しい機能ではありません。あらかじめ「○○体験」や「ケーブルカー往復」などをスマートフォンで予約し、このチケットをQRコードで発券。施設等の入り口でスマートフォンの画面に表示されたQRコードを読み取ってもらい、サービスを受けます。

今回は京都丹後鉄道の福知山〜天橋立間と丹後海陸交通バスの天橋立〜天橋立ケーブル下間で「即時決済機能」を。天橋立ケーブルカーと天橋立遊覧船で「事前予約利用」をそれぞれ使っていきます。
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MaaSアプリ「WILLERS」に日本初となる区間運賃対応QRコード即時決済機能追加 2/10から丹鉄沿線で実証実験
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アプリをDL→アカウントとクレジットカードを登録

「WILLERS」を使用するためには、ストアからアプリをダウンロードし、アカウントを作成、さらにクレジットカードを登録する必要があります。
ここで注意点が一つ。「WILLERS」のアカウントは「WILLER会員」のアカウントは異なります。普段から高速バス・夜行バスを利用している方が「WILLER会員」のアカウントを入力しても弾かれてしまいます。アプリを使用する際はFacebookやGoogleのアカウントでログインするか、新規登録を行いましょう。

続いてクレジットカードの登録を行います。必要なものはカード番号とセキュリティコード。これをアカウントと紐づけておくことで、電車などに乗る際にピッとかざし、降りる際にもう一度ピッとやるだけで乗車区間分の運賃を引き落としてくれるのですね。
準備が整ったら早速QRコード即時決済を試してみます。まずは画面右下の「チケット」ボタンを押して画面を移動し、画面中央の「利用中 予約済み 履歴」から「利用中」を選択します。

画面にQRコードが表示されました。これを駅改札に設置されている読み取り用の端末にかざします。

これで入場はOK、早速列車に乗りましょう。



天橋立に到着すると、今度は改札口の端末に同じ画面のQRコードを読み取らせます。しばらく待つと「履歴」の画面に「金額」「入出場駅と日時」が表示される……という仕組みですね。丹後海陸交通バスも同様の方法で乗ることができます。

ケーブルカーや天橋立遊覧船はチケット事前予約で
QRコードによる事前予約を利用する場合は画面左下の「おでかけ」を選択。画面上の黒帯に表示された「▼」ボタンを押してエリアを「京都:丹後」に設定。バスマークをタップすると「天橋立笠松公園ケーブルカー」のチケットが、双眼鏡のマークなら「伊根湾めぐり遊覧船」や「天橋立観光船」のチケットが選べるようになります。

ここで体験したい・乗りたいチケットを選び、予約画面へ。日時と利用者数を設定し、アプリ利用規約に同意してOK。予約したチケットはアプリ画面下の「チケット」→「予約済み」から表示できるようになるので、この画面を乗車・乗船・体験前に係員の方に提示します。
「ケーブルカー」「天橋立観光船」ともに、係員の方のスマホでQRコードを読み取ってもらう形式でした。QRコードの下に表示されている「チケットを使う」はQR決済未対応の場所で使うためのものなので、ここでは触る必要はありません。




このように二つのQR決済機能を使いこなせば、財布を出す必要もなく、スマホ一台とクレジットカード一枚で福知山から天橋立までのちょっとした旅行が楽しめました。
QRコード版「PASMO」?
実際の使用感としては……
・「即時決済機能」は「QRコード版の『PASMO』」
・「事前予約利用」のチケットはごく一般的な電子チケット
といったところ。利用者目線では「QRコードにこだわっている」という一点を除けばそこまで画期的なサービスが出てきたとは感じません。
しかし事業者には違った景色が見えていることでしょう。京都丹後鉄道沿線地域MaaS推進協議会の寒竹さんによれば、本システムの導入コストはSuica・ICOCAなどの交通系ICカードの数十分の一。廉価な電子決済手段が増えるのは地域交通を担う側としてはありがたく、「WILLERS」はそのハードルの低さを武器に普及していく可能性があります。
ただ、現状「WILLERS」のQRコード決済機能はそこまで使いやすいとは言えません。チケット予約のデフォルトの日付がその日のものではなかったり(当然、別の日で予約してしまうと当日は使用できません)、スマホによるQRコードの読み取りが上手くいかずに入場に時間がかかってしまうケースも多々見られました。
UI/UXの問題に関しては他のMaaSアプリでも見られることですし、実証実験中ゆえ仕方のない面もあります。とはいえ現状では「交通系ICカードでピッとタッチするだけ」に慣れた人に受け入れてもらうには難しく、スマートフォンの操作に慣れていない人が「切符を買って購入」というアナログな手段から移行するにはハードルが高い。「WILLERS」のQR決済が地域交通の手段として根付くかどうかは早急に操作性を改善できるかどうかで決まるでしょう。
なお「WILLERS」でQRコード決済を採用した理由としては、単に導入コストを下げるだけでなく、本システムを利用して「まちづくり」や地域の活性化に資する狙いもありました。そのあたりの面白い話やQRコードを利用する「もう一つのメリット」などはちょっと長くなってしまうので、続く「丹後のローカル鉄道がなぜQRコード決済システムを導入したのか? サービスの裏には壮大な『まちづくり』戦略が潜んでいた」でお届けします!
2020年2月18日追記 ↓次の記事↓
丹後のローカル鉄道がなぜQRコード決済システムを導入したのか? サービスの裏には壮大な「まちづくり」戦略が潜んでいた
https://tetsudo-ch.com/10071597.html
記事/写真:一橋正浩
※……京都丹後鉄道沿線地域MaaS推進協議会の調査による