鉄道各社の「2学期」始まる 1学期と夏休みの「考課表」は?

2020.09.12

緊急事態宣言解除後、通勤通学客は回復傾向をたどりますが、完全に元に戻ることはないというのが大勢の見方です。 イメージ写真:PIXTA

今年は夏休みが短縮された学校も多かったようですが、9月1日から2学期が始まりました。鉄道事業者の視点で夏休みまでを振り返れば、新型コロナウィルス感染症で過去に経験ない苦境に立たされました。政府は4月7日に全国規模で緊急事態宣言を発出、5月25日の解除後も経済活動再開に伴い感染者数は高止まり傾向を示し、外出自粛や在宅勤務のリモートワークは経営に大きな打撃を与えました。ここでは各種データを駆使して、鉄道とコロナの関係を再考してみましょう。

数字上ではコロナの影響は収束!?

国土交通省は「新型コロナウィルス感染症による関係業界への影響」を月次データとして集計、7月末分までが公表されています。鉄軌道の聞き取り対象は旅客輸送を手掛けるほぼすべての事業者175社で、内訳はJR旅客6社、大手民鉄(私鉄)16社、公営11社、中小民鉄142社。輸送人員を見れば、「前年同月に比べ50%以上減少した」の回答が、5月は大手民鉄で13%、6、7月はゼロでした。公営は5月70%、6月11%、7月ゼロ、中小民鉄は5月59%、6月19%、7月22%。中小は依然楽観を許さないものの、大手や公営は収束に向かいつつあるように思えます。

同じ国交省データで、バスや航空と比較しましょう。一般乗合バスは運輸収入を前年同月と比較。50%以上減は5月54%、6月6%、7月8%、高速バスは5月95%、6月93%、7月91%でした。航空は国内線全体の輸送人員を前年同月と比較。5月93%減、6月78%減、7月67%減で、高速バスや航空の苦戦が目立ちます。

鉄道はJRの輸送人員が反映されず(新幹線などの輸送実績は公表)、鉄道と航空は輸送人員、バスは運輸収入という違いもありますが、どうやら鉄道はバス(特に高速バス)や航空に比べ非常事態宣言解除後の立ち直りが早いようです。

国交省は、業態ごとの資金繰り状況も調査しました。鉄道は、政府系や民間の融資、持続化給付金給付を受けたのがほぼ半数の49%。雇用調整助成金も57%の事業者が活用します(検討中を含む)。確かにバスや航空に比べ、鉄道事業者の資金ショートのニュースは聞こえてきません。

盆輸送は前年の4分の1に

次いで、公共交通事業者にとって年末年始やゴールデンウィークと並ぶ書き入れ時に当たる盆輸送実績(8月7~17日)をみましょう。JR旅客6社の主要46区間の新幹線と在来線(特急列車など)の利用客数は354万9000人にとどまり、同曜日の前年比較で76%減少しました。会社別ではJR北海道62%減、JR東日本77%減、JR東海76%減、JR西日本77%減、JR四国67%減(瀬戸大橋線含まず)、JR九州72%減。帰省や旅行は慎重にという呼び掛けが反映された数字といえます。

航空(8月7~16日)との比較では、日本航空(JAL)の国内線搭乗客数は前年比66.9%減、全日本空輸(ANA)は69.6%減。JRの減少率が数ポイント程度高いようですが、今年の盆輸送が総じて低調だったことは確かです。

JR、民鉄各社が営業赤字

コロナの影響はJR各社や大手民鉄の第1四半期決算(4~6月)からも理解できます。JR東日本の連結決算は売上高3329億円(前年同期比55.2%減)、営業損失1783億円(前年同期は1446億円の黒字)、JR東海は売上高1287億円(72.7%減)、営業損失836億円(2062億円の黒字)、JR西日本は売上高1633億円(55.3%減)、営業損失942億円(660億円の黒字)、JR九州は売上高618億円(38.4%減)、営業損失157億円(154億円の黒字)となりました(いずれも1000万円以下切り捨て)。

民鉄は代表3社を紹介。西武ホールディングスが売上高663億円(54.2%減)、営業損失176億円(215億円の黒字)、近鉄グループホールディングスが売上高1139億円(62.1%減)、営業損失380億円(183億円の黒字)、西日本鉄道が売上高703億円(23.8%減)、営業損失76億円(41億円の黒字)。鉄道事業のウェイトが高い事業者ほど赤字額が大きいという傾向が判明しました。

働き方改革を受けた定期客動向を注視

今年は帰省をあきらめた人も多かったようで、パソコンやスマートフォンの画面で古里の両親に元気な顔を見せる「リモート帰省」の用語も生まれました。

最終章では、鉄道事業者の今後を考えてみましょう。鉄道会社の経営基盤を支えるのは沿線住民、日々の通勤通学客や買い物客です。コロナによる変化では、自宅でのリモートワークや学生のオンライン授業が一般化しました。しかし、すべてをリモート化するのは難しく、沿線利用客が鉄道会社の屋台骨を支える構図は変わりそうもありません。

ただ、ちょっと注意が必要なのがコロナを受けた働き方改革。一般企業は半期ごと、通常は4月と10月に通勤定期代を支給します。今年4月の年度初は緊急事態宣言前だったこともあり、多くの企業は通勤定期代を通常通り支給したはずです。その後のリモートワークで定期券を払い戻せば、鉄道事業者には減収になるはずですが、払い戻しを求めた企業が多かったという話は聞きません。

しかし、リモートワークが恒常化する可能性もあるアフター・ウィズコロナ時代、定期代支給を見直して実費精算に切り替える企業のニュースが聞かれるようになりました。鉄道事業者がどんな対応を取るべきか、熟考が必要な経営課題といえそうです。

鉄道事業者の自助努力では、経費節減を指向した終電時刻繰り上げや運賃制度見直しといった抜本的な構造改革が取りざたされています。個人的経験ですが先日、近隣のスーパーで買い物した際「働き方改革に呼応して閉店時刻を30分間繰り上げます」というポスターが目に留まりました。終電繰り上げや運賃制度見直しも、根本の目的はスーパーと同じ。経費節減という自社都合でなく、新しい生活様式に対応する企業の考え方を前面に打ち出せば、社会の理解も幾分か得やすいようにも思えます。

文:上里夏生


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