安全安心な江の島観光をSuicaで実現・JR東日本 ホテルメトロポリタンは感染防止で宿泊客受け入れ

2020.11.22

湘南を代表する観光スポット・江の島。公共交通によるアクセスでは、藤沢から小田急江ノ島線または江ノ島電鉄の利用が便利です。 イメージ写真:まちゃー / PIXTA

新規感染者の急増で緊急事態宣言の2020年4~5月、夏休みの8月に続く流行第3波への懸念が高まる新型コロナウィルス。政府は11月21日の「新型コロナウイルス感染症対策本部」会合で、観光支援策・Go To トラベルの一部制限を決断。民間レベルでも、アフター・ウィズコロナ時代に合わせた感染防止と経済活動の両立が求められます。

鉄道業界をリードするのがJR東日本とグループ各社で、神奈川県藤沢市では同市や藤沢市観光協会とともにIC乗車券・Suicaのデータを解析して、江の島観光を再生。東京・池袋のホテルメトロポリタンは、「アフターコロナが新しいスタートライン」と位置付け海外帰国者を受け入れました。

Suicaが江の島を救う!?

模擬的に作成した藤沢・江の島エリアの観光目的来訪者の1カ月間の出発駅ごとの人数  画像:JR東日本

「江の島エリアの観光目的来訪者の状況を分析・評価」は2020年11月5日、藤沢市、藤沢市観光協会、JR東日本の3者連名で発表されました。藤沢市によると、2019年度時点の市への来訪観光客数は1929万9800人。うち江の島への海水浴客は155万1800人で、ほぼ8%を占める人気スポットです。

海水浴場が海開きを見送った2020年夏は観光客激減で経済的打撃が大きく、2021年に向けて「安全安心をベースにした防疫型観光」が求められます。市内に藤沢、辻堂の東海道線2駅を持つJR東日本は、鉄道利用客の行動分析という実務的な形で力を貸します。

具体的には、JR東日本はSuicaで駅改札を通過する際に記録される入出場駅、入出場時刻などのデータを私鉄を含め、プライバシーに配慮しながら解析。電車利用者の行動分析リポートを作成して、地元に提供します。藤沢市や同市観光協会は、コロナで来訪客の行動がどのように変わったかを把握し、2021年夏に向けた安全安心の観光実現の基礎資料とします。江の島は東京オリンピックのセーリング会場で、地元は選手や観戦客の安全安心に役立てます。

自治体連携は藤沢市が初 年代別や性別で解析

Suicaによる情報収集のイメージ 画像:JR東日本

3者連携のきっかけは、藤沢市が電車乗降データを活用した来訪観光客の行動分析をJR東日本に打診したこと。これに応じたJR東日本は、Suicaデータを利用者個人のプライバシーに配慮して統計処理。市や観光協会は、JRのリポートを観光再生に活用する手順が決まりました。

Suicaはコンピューターネットワーク端末に匹敵する高度な情報蓄積機能を持つとされ、JR東日本は従来からSuica解析データを駅案内改善をはじめとする部内的に活用してきました。今回はそうしたノウハウを部外向けに展開するもので、自治体と共同の本格的な取り組みは藤沢市が初めてです。

JR東日本が模擬的に作成したリポートによると、藤沢市への来訪者は東海道線東京・横浜方面と同線小田原・平塚方面の東西2方向に加え、茅ヶ崎で接続する相模線についても八王子・相模原方面からの電車利用客を乗車駅別に表示。来訪者は月別の旅客数に加え、男女比率、10歳刻みの年代別、さらには年代別の男女比を割り出します。

江の島の玄関口となる藤沢駅の乗降分析では、来訪(降車)と出発(乗車)の時間帯別客数のほか、市内への滞在時間、時間帯別の滞在時間などが分かります。市や観光協会は、ピーク時間帯を具体的に示すことで来訪客が自ら三密を回避できるようにするなど、安全安心の観光を実現します。

実施期間は2020年10月から2021年3月までで、リポートは月次で作成します。市や観光協会は対象期間以降もJR東日本と連携、産業振興をはじめとする幅広い分野でJRと協業します。

プライバシー保護に万全の配慮

JR東日本が、藤沢市来訪者の行動分析で最重視したのがSuicaデータの取り扱い方法です。過去にあった鉄道利用データとプライバシー保護の問題などを教訓に、収集データを乗車駅、降車駅、日時、年代、性別の5項目に限定。仮に利用客が非常に少ないと個人が特定される可能性もわずかながらあるため、リポートから除外します。

さらに利用者がリポートからのデータ除外を希望する場合は、メールや電話でSuicaID番号を連絡すれば応じます。スマートフォンで列車に乗降できるモバイルSuicaについても、もちろん同様の対応を取ります。

業務内容のすべてを見直すチャンス

駅ビル、ホテル、飲食と事業領域を拡大するJR東日本グループにあって、日本ホテルが運営するホテルメトロポリタンのコロナ対応が高く評価されています。メトロポリタンは宿泊のほか飲食、宴会、婚礼を手掛ける総合ホテルですが、コロナを「業務内容のすべてを見直すチャンス」とプラス思考でとらえ、厳しい時期を乗り切る構えです。

フロントへの飛沫防止シールド設置、飲食は閉店時刻繰上げとビュフェのアラカルトメニュー個別皿提供、宴会はソーシャルディスタンス確保などは多くのホテルで取られますが、宿泊で知恵を絞ったのが海外帰国者受け入れです。ホテルは契約企業からの「帰国者を待機期間受け入れてほしい」の要請に、人道的見地から応じることにしました。

主な対応策は「外出は遠慮いただき、部屋からも極力出ないでもらう」「シーツやタオルは3日分まとめて提供し、3日後に部屋ごと変わってもらう」「空いた客室は3日間放置した上で、専門業者に徹底消毒してもらう」など。賢明な対応策で、当然感染拡大はゼロ。宿泊客からは「このような時期に受け入れてもらい、本当に助かりました」の感謝が相次ぎ、ホテルの社会的評価を高めました。

まだまだ厳しい時期が続きますが、メトロポリタンは「社内的な無駄をなくして、お客さまの望む商品やサービスを提供したい」と誓います。

シンガポール向けオンラインイベント

JR東日本のシンガポール向けオンラインイベント=イメージ= 画像:JR東日本

コロナ収束は依然見通せない状況ですが、JR東日本は訪日インバウンド再開に向け先手を打っています。自社運営する情報発信プラットフォームのJapan Rail Cafeで2020年11月20~22、27~28日の5日間、シンガポールで日本の魅力を紹介するオンラインイベント「THE JAPAN RAIL FAIR~A VIRTUAL TRIP TO JAPAN~」を開催します。

実質的な主催者はJR東日本シンガポール事務所。JR東日本のほか、JR北海道、JR西日本、JR四国、JR九州、JR東日本ホテルズ、日本航空(JAL)、自治体、業界団体などがネット上の仮想観光展に出展します。鉄道の旅や観光地の魅力などを、日本からの生中継を交えて紹介。目玉は駅弁紹介で、事前に申し込んだ参加者の自宅に駅弁を届けて、試食しながら日本への旅気分に浸ってもらいます。

日本酒造組合中央会による焼酎セミナーと飲み比べイベントも、世界でブームを呼ぶ日本酒ブームに乗って前評判は上々。JR東日本は「仮想と現実、モノとコトを組み合わせた新しいコミュニケーションで、海外の方々が日本を体験できる機会を創出。日本の地域情報の発信を通じて、地方創生に貢献したい」と張り切っています。

文:上里夏生


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