JR東日本 羽田アクセスに名乗り上げる

羽田空港アクセス線の路線イメージ。東山手ルート以外に西山手、臨海部の両ルートも示されています。画像は国交省の交通政策審議会資料から

2010年代前半は羽田鉄道アクセスの一番手だった都心直結線ですが、2015年ごろから情報をほとんど見掛けなくなります。というのは、JR東日本の羽田空港アクセス線構想が浮上したから。会社としての正式発表はなかったものの、国の交通政策審議会への提出資料を記者クラブに配布したことで、多くのマスコミが取り上げ一気に広まりました。

ルートは図の通りで、羽田からの新路線は途中で3本に枝分かれします。JR東日本は羽田空港新駅―東京貨物ターミナル(東タ)間を「アクセス新線」、枝分かれ後の3本を西側から「西山手ルート」「東山手ルート」「臨海部ルート」と呼びます。3ルートのうち、どれを先行させるのかも注目でしたが今回、東山手ルートが許可を受け、東京駅と羽田を直結させる方針が明確になりました。

事業許可を受けたアクセス新線区間にはトンネルを建設。羽田側は国内線ターミナル地下に新駅を造り、途中駅は設けません。東タ以北田町までは東海道貨物線、田町―浜松町間は大汐短絡線(東海道貨物線で現在は休止中)を経由します。

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改良区間を含めた総費用は約3000億円。JR東日本は、東京駅から羽田空港までの所要時間を約18分と試算します。浜松町以北は上野東京ラインと同じルートで東北、高崎、常磐の各線方面に接続します。実際の列車では、高崎、宇都宮、水戸の各駅発羽田空港行きなどが考えられます。

成田空港アクセスとして定着する「成田エクスプレス」(N’EX)。羽田空港アクセス線にJR東日本はどんな車両を走らせるのか。まだ相当先ですが、開業が迫ればファンは興味津々でしょう。 写真:ひろ / PIXTA

日本記者クラブで国内外の記者に発表

ここで余談ですが、JR東日本の深澤祐二社長は、事業許可の前段に当たる「羽田空港アクセス線の環境影響評価手続きに着手」を、2019年2月に日本記者クラブでの会見で国内外のプレス向けに発表しました。記者経験で言えば、日本記者クラブでの会見は一般には会社紹介や全般的な事業方針を説明しますが、深澤社長はニュースになりそうな事柄を発表しました。

JR東日本は海外で製品が発売される自動車や家電メーカーと違い、事業エリアがほぼ日本国内に限定されます。ここから想像ですが、同社は一定の戦略を持って、羽田アクセスを通常の社長会見でなく日本記者クラブで発表したのでしょう。JR東日本は海外投資家からも高い評価を得ていますが、海外マスコミを意識した発表方法に、私は広報戦略の巧みさを感じます。