PASMOの特別ヘッドマークをつけた記念列車に出発合図を送る、石田駅長(左)と「私とみんてつ小学生新聞コンクール」金賞の山下さん(右)。車両はラッピングトレイン「彩色兼備」です(筆者撮影)

今春、輸送サービスをレベルアップする鉄道が埼玉県にあります。秩父鉄道は2022年3月12日から、交通系ICカード「PASMO」のサービスを全駅で開始しました。PASMO採用の理由は、「接触機会を減らして感染症対策を徹底しつつ、業務効率化で社員の働き方改革を実践。お客さまの利便性も向上させたい」(大谷隆男社長)。これで埼玉県を走る鉄道路線は、8社すべてで交通系ICカードを利用できるようになりました。

本コラムは、〝PASMO初日〟に熊谷駅で開かれた「サービス開始記念オープニングセレモニー」をご紹介。あわせて、日本の高度経済成長を支えたセメント(原料の石灰石)輸送を出発点に、最近はSL「パレオエクスプレス」などで観光鉄道としての存在感を高める、秩父鉄道の歴史や戦略をまとめました。

PASMOやSuicaなど10種類のICカードに対応

交通系ICカードのメリットは、あらためて紹介するまでもないでしょう。JRや大手私鉄、公営鉄道から、最近は中小鉄道や路線バスに広がりをみせます。秩父鉄道は数年前から検討や準備に着手しており、JRグループのダイヤ改正にあわせてPASMOサービスを開始しました(今回、同社のダイヤ改正はありません)。

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利用できるのは、PASMOやJR東日本のSuicaのほか、JR東海のTOICA、JR西日本のICOCAといった全国の鉄道事業者の主なICカード10種類。ICカードは市中店舗でも電子マネーとして使用できるので、キャッシュレス社会に連動して汎用性が広がります。

カードやIC定期券などの販売は、羽生、熊谷、武川、ふかや花園、寄居、長瀞、秩父、御花畑の8駅で対応。前記8駅に影森、三峰口を加えた10駅以外の駅では、前日の3月11日を最後に駅窓口の営業を終了しました。今後は係員が定期的に見回りします。

急行「秩父路」の急行料金を無料に

ICカードは利用客、社内の双方にメリットをもたらす、文字通りWinWinのツール。カード導入を機に、急行「秩父路」の急行料金も無料化しました(※)。観光客の利用が多い、全線1日乗り降り自由の「秩父路遊々フリーきっぷ」など、紙製きっぷも一部残りますが、将来的にはICカード専用改札機にQRコードの読み取り機能を追加して、乗車券類をオールデジタル化するプランです。

秩父鉄道はPASMO導入に先行する形で、小田急電鉄と連携し2021年11月から、小田急MaaSアプリ「EMot」で「秩父路遊々フリーきっぷ デジタル版」と「宝登山ロープウェイフリーきっぷ」を発売しています。

※鉄道チャンネル編集部注……秩父鉄道は急行料金無料化の期間を「当分の間」としており、キャンペーンの終了期間については明言していません。期間中は乗車券類のみで「急行秩父路」に乗車出来ます。