東急が京急に乗り入れる!? 「新空港線の新設」

京急本線から空港線が分岐する京急蒲田駅。2012年までに連続立体交差事業が完成し、3層構造の立体的な駅に生まれ変わりました。1層フロアは駅事務所と改札で、2、3層フロアがホーム。空港線は本線ホーム中央部から分岐するなど、線形を工夫してスペースの制約をカバーします(筆者撮影)

羽田空港の鉄道アクセスには、「新空港線の新設」もあります。通称「蒲蒲線」で、新空港線がつなぐ東急蒲田(東急の正式駅名は蒲田です)と京急蒲田からのごろ合わせ。2000年ごろから構想が出ている、東急多摩川線を延伸して京急空港線に接続させるプロジェクトで、地元の大田区が中心になって旗を振ってきました。

ルートは、東急東横線多摩川(駅名)から多摩川線に直通運転。矢口渡から地下に入り、JR東海道線をくぐって京急蒲田か大鳥居から空港線に乗り入れます。蒲田駅東側には大田区役所がありますが、庁舎地下には鉄道トンネルのスペースが確保済みという〝都市伝説〟もあります。

東急多摩川線を京急蒲田まで伸ばす新空港線の路線イメージ。京急蒲田から先の羽田空港方面は整備方法が未定のため、路線が描かれていません(資料:大田区の令和4年度予算解説資料)

最大の課題は、京急が1435ミリの標準軌、東急が1067ミリの狭軌と線路幅が違う点。実現には、京急の3線軌条化または車輪幅を変えられるフリーゲージトレインの技術開発が必要で、相当なハードルがあります。

「新空港線の整備主体設立及び関連事業で12億円弱を予算化」(大田区)

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大田区は2022年度、「新空港線の整備主体設立及び関連事業」として11億8574万8000円を予算化しました。

区の資料には、整備(鉄道建設)手法が記載されます。新空港線は、「都市鉄道等利便増進法」に基づき営業主体(鉄道事業者)と整備主体(第三セクター)に分ける、上下分離方式を採用します。

2005年に施行された都市鉄道等利部増進法(略称はないのでフルネームで書きます)は、既存の鉄道路線をつないだり、大規模駅改良をすることで、文字通り都市鉄道の利便性向上を促進する目的の法令。適用第一号は神奈川東部方面線(相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線)です。

大田区は予算のうち10億円は、事業を円滑に進めるための基金として積立。関連事業では、新空港線の事業内容を区民ら理解にしてもらう広報・啓発活動を実施します。

新空港線の整備意義を大田区民らに知ってもらう啓発活動。写真は地元の「大蒲田祭」に出展したPRブースです(資料:大田区の令和4年度予算解説資料)

羽田空港国内線ターミナル駅に引上線新設(京急)

鉄道プロジェクト最後は、「京急羽田空港国内線ターミナル引上線の新設」。京急の引上線は、空港線終点の国内線ターミナル駅の先に線路を延ばし、到着した電車を留置できるようにします。

京急羽田空港国内線ターミナル駅への引上線新設の事業イメージ。国内線ターミナルから東方向(沖合方面)に線路を延伸して引上線を設けます。資料をみると、JR東日本の羽田空港アクセス線は京急とは直角の北方向から空港に入ることがわかります(資料:「2022冬公共交通フォーラム」での京急の発表資料から)

具体的な動きはこれからですが、引上線が完成すれば列車運行に弾力性が生まれ、航空利用客の利便性向上につながるはすです。

自動運転バスなど未来の交通を発信(「スマートシティEXPO2022春」)

鉄道プロジェクトに続いて、羽田の話題をワンポイント。羽田空港隣接地の「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)」で、2022年4月22~24日に開かれた「スマートシティEXPO2022春」をご報告します。

羽田イノベーションシティには鉄道事業者でJR東日本、京急、東京モノレールが参画します。スマートシティEXPOでは、鉄道関係イベントはありませんでしたが、ソフトバンクグループのBOLDLY(ボードリー。企業名)が技術開発中の自動運転バスをデモンストレーションするなど、未来の交通が情報発信されました。

「スマートシティEXPO2022春」でデモンストレーション運転されたBOLDLYの自動運転バス(筆者撮影)

記事:上里夏生