会見を終えて握手する後藤現社長(左)と西山新社長(右)(筆者撮影)

およそ3年間にわたり社会に影響を与えた、新型コロナが収束に向けためどをつけた2023年。鉄道業界でも複数の企業が、新しい体制で4月からの新年度を迎えます。その中の1社が西武グループ。親会社の西武ホールディングス(HD)と、鉄道事業の西武鉄道のトップがそろって交替します。

西武HDは後藤高志社長が代表取締役会長、後任の代表取締役社長に西山隆一郎常務執行役員が就任します。約17年ぶりのトップ交替、最大の理由は「グループ全体の経営体制の若返りと専門性の強化」(後藤社長)です。2023年2月14日に東京都内で開かれた、新旧トップの記者会見に出席、西武グループの針路を聞きました。

代表取締役は後藤会長と西山社長の2人体制に

4月1日からの西武グループの新体制。後藤高志社長は、西武HDの代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任。後任の代表取締役社長には西山隆一郎取締役・常務執行役員が昇任します。

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西山新社長は社長執行役員とCOO(最高執行責任者)、それに現職の経営企画本部長を兼任します。代表取締役は、後藤会長と西山社長の2人体制になります。

西武鉄道の代表取締役社長・社長執行役員には、小川周一郎取締役・常務執行役員が就任。2020年から鉄道トップを務めてきた喜多村樹美男社長は退任します。西武鉄道の社長交替は、2023年6月に開催予定の定時株主総会と取締役会で正式決定します。

広報部長を長く務める

西山新社長は後藤社長と同じみずほ銀行(みずほファイナンシャルグループ)出身で、西武グループ入りしたのは2009年。2014年まで西武HDや西武鉄道の広報部長(広報室長)を務めました。

広報部門在任中、マスコミを騒がせた〝事件〟が発生。西武HDは経営再建資金提供を受けたアメリカの投資法人から、敵対的買収を仕掛けられました。

同法人は鉄道で不採算の多摩川、山口、国分寺、多摩湖、西武秩父の5路線廃止を要求。報道も過熱しましたが、西山新社長は冷静な対応とタイムリーな情報発信で難局を乗り切りました。

その後、西武系のプリンスホテルを経て、2022年4月から西武HDの常務執行役員に就いています。

住んでよかったと思える沿線価値の向上

会見で西山新社長は、2023年度までの中期経営計画の目標達成に全力を挙げる考えを改めて強調しました。西武の中計といえば2022年5月、環境境負荷の少ないサステナ車両の導入(他社からの車両譲受)の話題で盛り上がりました。

今回、新たな発言はありませんでしたが、「計画達成に全力を挙げる」とのことなので、鉄道ファンは引き続き注目する必要がありそうです。

さらに鉄道事業では、社員の専門性を高め「西武沿線に住んでよかった」と思ってもらえる沿線価値の向上、具体的にはスマホアプリを活用したポイントサービスに力を入れるそうです。

西武鉄道は、2022年7月から乗車ポイントサービスをスタート。2023年4月1日には、同一運賃区間を同一月内に複数回乗車でポイントが貯まる「リピートプラス」で、サービスアップします。

ポイントサービス「おでかけプラス」と「オフピークプラス」のイメージポスター(画像:西武鉄道)

鉄道、ホテルに共通する経営方針では、「コロナ禍からの回復、そして次の成長軌道に乗せていく」の考えを表明しました。