「新幹線ってね、むかしは駅弁やサンドイッチ、コーヒー、ビール、おみやげとかを売る“車内移動販売”があったんだよ」

そんな話を子どもたちに伝える日が、ほんとうにやってくるとは……。

―――新幹線といえば、いまもむかしも、東京と名古屋・京都・新大阪を結ぶ東海道新幹線。

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その東海道新幹線を担うJR東海は、10月いっぱいで車内ワゴン販売を、バサッとやめる。

「新幹線の移動中は貴重な睡眠時間」という人もいるから、いまになったら“ニッチなファン”になったかもしれないけど、この発表は衝撃だった。

そこで想う。レクイエム&ビジョン、東海道新幹線 車内販売。

個人的視点、もちろん衝撃&ショック

東京~名古屋・京都・新大阪と、毎週のように出張し、新幹線車内でいつも車内販売に頼っていた自分がまず感じたのは、もちろんショック。

新幹線自由席派で、ホームに立ってすぐにやってきた新幹線のぞみ に乗って、大好きなビールや酒の友を新幹線車内で買うのが、出張後の楽しみで、“儀式”だった。

出張へ行く途中の午前中の新幹線移動中ビールも、車内販売に頼ってきた。それはそれは、うまかった。現金払いからSuica精算にして、めっちゃ便利に思ってた。

だから、「今回の車内販売やめます」は、新幹線100系 2階建て食堂車が消えるときと同じぐらい、「車内販売やめる」は、衝撃&ショック。

―――ただ、これも落胆しっぱなしの自分に「当たり前といえば当たり前」といい聞かせる部分もある。それは↓↓↓

JR東海大好き視点、自社のビジネスに集中するからこその決断

JR東海グループの今回の決断は、「まさしくJR東海らしい」と感じてしまう。

本州JR3社、JR東日本・JR東海・JR西日本のなかで、「新幹線ビジネスに集中する」というスタンスを貫くJR東海の姿勢は、ある意味、いさぎよくて、いちユーザーの自分も、どこか納得できる。

在来線サービスも、たとえば車両は形式をとことんシンプル化し、過剰なサービスを追わない。JR東日本や西日本が手がける豪華観光列車のようなものが存在してないのも、JR東海だ。

いまのご時世で考えると、国民が2極化するときにアッパー側のニーズに応える列車移動サービスを手がける東と西とは違い、まっすぐに電車移動の定時制・快適性、そして経済性を貫いてきた、ある意味、愛を込めていえば“全国民にフラットに向き合う変態企業”だ。

そんな大好きなJR東海だからこそ、今回の「車内販売やめた」も、ポジティブな決断と想いたい。

利用者視点、新たな新幹線の乗り方に広がり

新幹線の車内販売がなくなったら、出張や旅行で新幹線に乗るときの移動も変わるはず。

「車内でなにも買えない」と国民が知り始めれば、車内で飲食するドリンクやビール、サンドウィッチ、駅弁などを駅で事前に選ぶ・買うという時間が定着し、従来の新幹線移動にたとえば10分の余裕ができる。

いっぽうで、新幹線のぞみ よりも空席がある、各駅停車版こだま や、のぞみ よりも停車駅がある ひかり への分散乗車も期待できる。

自分のように、「新幹線車内でビールを呑みたい」という人は、移動時間に余裕があれば、こだま・ひかりにシフトするかも。

こだま・ひかり は、のぞみ を先に行かせるため、主要各駅で3分前後の停車時間があったりする。その時間に、ホームにある売店で、ビールや駅弁が買えるってことで、「ゆっくり帰るなら こだま・ひかり」というユーザーも、増えるんじゃないか。

ひいては、のぞみ の混雑率が減り、こだま・ひかり の空席が、埋まっていくんじゃないか―――とか。

そんなことを記していても、さびしいものはさびしい。残念だけど、それが時代だ。

―――ありがとう。東海道新幹線の車内販売。

新大阪で出張相手と晩酌(=飲み会)し、そのあと東京行き のぞみ 車内で何度もひとりでビールを買ったとき、「たくさん買っていただいてありがとうございます」といわれたあのシーンが、よみがえる。

もう一度。ありがとう。東海道新幹線の車内販売。JR東海の決断は、新しい新幹線移動時代の幕開けを知らせてくれたと思って、乾杯。