3つの通信手段で安全確保

さまざまなモニターが並んだ後続車の運転席(画像:ソフトバンク)

技術的ポイントを解説します。自動運転・隊列走行で最も大切なのは、先頭車の減速時、無人運転の後続車も遅れることなく速度を落とす車両間の協調運転です。

協調運転には、3つの通信手段を使います。一つ目は「V2N2V」、二つ目が「V2V」、最後が光無線通信です。

専門用語の羅列で恐縮ですが、V2N2Vはビークル・トゥ・ネットワーク・トゥ・ビークルの頭文字。バス~ネットワーク~バスの通信網で、バスの現在地などをチェックします。ソフトバンクの宮川潤一社長によると、自動運転には汎用通信網を活用し、次世代の「5G」規格で通信します。

V2Vはビークル・トゥ・ビークルの意味で、いわゆる車車間通信のこと。光無線通信はレーザー光通信で、大容量の情報をスムーズに送受信できます。

通信以外では、停留所の縁石に13センチ以内の幅で停車させるため、道路側のマーカーも活用します。

JR西条駅―広大キャンパス間に専用道

道路側のキーワードが「専用道」です。JR西日本が公道走行を東広島でテストするのも、そこに大きな理由があります。

東広島市はJR山陽線西条駅の南西約5キロに広島大学東広島キャンパスがあり、駅とキャンパスは延長約1.7キロ、4車線の「ブールバール」(フランス語の大通り)がつなぎます。今回は東広島市の協力で数百メートル区間をバス専用道とし、この区間を自動運転します。

2023年11月からの東広島市での実証実験のイメージ。JR西条駅と広大東広島キャンパスの周辺はそれぞれ自動運転。ブールバールの一部区間で自動運転します(資料:ソフトバンク)

東広島市での主な実験メニューは、①電波状態や勾配など走行環境の検証、②連節バス・大型バス2台での自動運転・隊列走行の課題抽出、③新技術に関する社会受容性の確認ーーの3項目。社会受容性は、自動運転のバスが社会的に受け入れられるかどうかの確認です。

信号メーカーやキャンバス発スタートアップも参加

自動運転・隊列走行BRTは、JR西日本とソフトバンクだけで完結しません。両社を含む参加5社の役割をご案内します。

まずは中核2社で、JR西日本は走行系や地上設備を設計。ソフトバンクは、全体のマネジメントと通信系を受け持ちます。

他の参加企業は日本信号、BOLDLY(ボードリー)、先進モビリティ(ASMobi)。日本信号は名門信号メーカーで、道路信号や踏切を考慮した自動運転システムを提案します。ボードリーはソフトバンク系の自動運転専門企業。本サイトでも、小型バスの自動運転などを紹介させていただきました。

ASMobiは東京大学生産技術研究所(生研)から生まれた、大学発のスタートアップ(スタートアップ)企業。東大生研では、2023年7月に開催した東京メトロと共催のワークショップをレポートしました。

参加5社とそれぞれの役割=イメージ=(資料:ソフトバンク)

これら参加企業をみれば、自動運転するのはバスでも、鉄道と深くつながることがご理解いただけるでしょう。

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