紅葉の陸羽東線を行く列車(写真:Yoshitaka / PIXTA)

地方ローカル線を沿線住民の利用だけで成り立たせるのはもうムリ。都市や外国から観光客を呼び込んで乗ってもらうことで、はじめて存続できる……。

そんな視点でローカル線のあり方を考えたのが、交通環境整備ネットワークが2024年6月8日に東京都墨田区の東武博物館で開催した「地域鉄道フォーラム2024」。観光客による利用促進をあらわす「交流人口の拡大と鉄道」をテーマに、ローカル線の可能性を展望した。

熱い議論が交わされた地域鉄道フォーラムのトークセッション(筆者撮影)

「温泉観光地と鉄道の深い関係」のタイトルで鉄道で行く温泉の魅力を紹介したのが、温泉ビューティ研究家の石井宏子さん。年間200日を旅先で過ごし、運転免許を持っていないので移動手段はもっぱら鉄道という筋金入りだ。

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石井さんが訪れた名湯で、印象に残ったのが宮城県大崎市の鳴子温泉。泉質は10種類以上あって、まさに〝温泉のデパート〟。湯が肌にまとわりつくように感じられ、湯がそれほど熱くなくても体の芯から暖まる。

鉄道は東北新幹線古川で乗り継ぐJR陸羽東線。JR東日本は「奥の細道 湯けむりライン」の愛称名でPRする。古川から鳴子温泉までは約1時間。「日本の原風景が広がる車窓を眺めているうち、都会のけんそうを忘れ心が旅気分にリセットされる」とローカル線旅の魅力を語った。

鳴子が東の横綱なら、西の横綱は徳島県三好市の祖谷(いや)温泉。かつての交通の難所・大歩危小歩危にある温泉郷で、秘境ムード満点だ。

祖谷温泉で鉄道ファン要注目は、「和の宿ホテル祖谷温泉」の私設ケーブルカー。露天風呂は宿の下170メートルの祖谷渓の谷底にあるが、ケーブルカーに乗ればわずか5分で到着できる。

祖谷温泉へのアクセスはJR土讃線で、JR四国は2017年に多度津~大歩危間を結ぶ観光列車「四国まんなか千年ものがたり」をデビューさせた。車両について石井さんは、「社内デザイナーの創意工夫が感じられ、食事も素敵」と評した。

トークセッションでパネリストを務めたのが、跡見学園女子大学観光コミュニティ学部の篠原靖准教授。観光分野の政府系委員を務めるが、出身は東武トラベル(現東武トップツアーズ)。旅行マン時代には、東武鉄道の名車・5700系電車のさよなら運転ツアーを企画したことも。

円安の追い風で訪日インバウンド客が増える昨今、地方ローカル線めぐりを楽しむ外国人が増えている。しかし、沿線での宿泊や買い物など消費拡大になかなか結び付かない課題もある。

篠原准教授は、「鉄道に期待されるのは、来訪客と地域をつなぐ役割。沿線関係者と力を合わせ『地域にお金を落としてもらう創意工夫』が今、求められている」と説いた。

記事:上里夏生

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