弘南鉄道 大鰐線が2028年4月1日から運行休止へ、元・東急7000系が活躍する路線が直面した人口減少と赤字の壁(青森県)
青森県内を走る弘南鉄道・大鰐線(おおわにせん)が、2028年3月31日の運行を最後に、翌4月1日から運行を休止することが明らかになりました。この路線は、南津軽郡大鰐町と弘前市中心部を結ぶ約14キロの単線区間で、長年、地域の通勤・通学を支えてきました。地域に密着してきた路線がなぜ休止を決断するに至ったのでしょうか。
弘前市周辺地域の足を支えたローカル鉄道

弘南鉄道(こうなんてつどう)は、青森県平川市に本社を置く地方私鉄で、1926年に設立されました。現在は、弘前から平川市を経由して黒石を結ぶ弘南線と、大鰐~中央弘前の大鰐線の2路線を運行し、地域の生活交通を担ってきました。かつては貨物輸送も行っていましたが、現在は旅客輸送が中心です。
大鰐線は、南津軽郡大鰐町と弘前市中心部を結ぶ約14キロの単線区間で、通勤・通学など地域の移動を支えてきました。
しかし、近年は利用者の減少が続き、施設の老朽化も進んだことから、路線の維持が大きな課題となっていました。大鰐線の年間利用者は、1974年度に約389万8000人を記録しましたが、その後は年々減少し、ピーク時の7%足らず、約27万1千人程度にまで落ち込んでいます。沿線人口の減少や自家用車の普及が影響したとみられます。
2023年8月、大鰐駅を出発した2両編成の列車が脱線する事故が発生しました。けが人は出ませんでしたが、国の運輸安全委員会は「軌道の維持管理が不十分だった」とする調査報告書を公表し、軌道補修の見直しなど再発防止策が求められました。

旧東急電鉄の車両が活躍
経営面では、収支改善と経費節減を進めてきたとされています。
車両は、首都圏私鉄からの譲受車を整備して運用してきました。大鰐線では元・東急デハ7000形をベースにした弘南7000系を2両編成で使用しています。しかし、同社は昨年度の決算で4086万円の赤字を計上し、赤字は14期連続となりました。役員報酬を2割減額するなどの措置を取り、株主優待乗車証や優待乗車券の発行も取りやめるなど、コスト抑制策を進めてきたといいます。
同社はこれまで国や県、沿線市町の支援を受けて運行を続けてきたことにも触れ、経営環境を踏まえて決断したとしています。
年間利用者がピーク時の7%未満にまで落ち込み、14期連続の赤字、さらに施設の老朽化とそれに伴う脱線事故 など、路線の維持が極めて困難になったことで休止の決断をくだした弘南鉄道。休止後の公共交通は、県が主催する検討会議で調整が進められています。通学・通院時間帯の本数確保や主要拠点での乗り継ぎ、運賃や定期券の取り扱いなどが議題で、同社も可能な限り協力するとしています。
(写真:PIXTA)
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