2025年3月のブルト仕様EL登場に続き、同年11月には国鉄タイプの12系客車がデビュー。2026年になってからも、昭和の「夜行座席急行」12時間越え運転、アジア初の「きかんしゃパーシー号」実車運行と、ファンを色めき立たせるニュースが途切れない静岡県の大井川鐵道(大鉄)。

大鉄の実態は、もちろん観光専業でなく一般鉄道です。そんなふだん着の大鉄を知りたいと、新金谷駅に隣接する大鉄本社を表敬訪問しました。当日はSLやELダイヤのない普通列車だけの運転日。おりしも観光の端境期とあって観光客や鉄道ファンは多くありませんが、それでも愛好家は乗り鉄・撮り鉄にやってきます。

本コラムは、JR島田駅→しずてつジャストライン(バス)→新金谷駅・大鉄本社→大井川本線普通列車→川根温泉笹間渡駅→島田市自主運行バス→JR島田駅のルートで川根路をぐるり周遊。観光列車だけじゃない大鉄の魅力をお届けします。
(TOP写真:川根温泉笹間渡で折り返し発車を待つ21000系。先頭車両は2丁パンタグラフで、大鉄で連結面パンタを増設して南海デビュー時の姿に戻りました・筆者撮影)

電車とバスで川根路周遊行

川根路紀行の始まりは、しずてつバスでJR島田から大鉄新金谷へ。
電車とバスを乗り分けると旅をバージョンアップできますが、乗車する金谷島田病院線は土日曜日と祝日は運休。注意が必要です。

大鉄本社は新金谷駅2階。2024年6月に就任した鳥塚亮社長のアイディアマンぶりは本サイトでご覧の通りですが、この日は不在。広報でお世話になっている新堀絵里さんにごあいさつして、ミニ情報をいただきました。

ファンクラブ会員にマル秘情報!?

新堀さん一推しは「大鉄ファンクラブ」。「シャッターチャンスを知る!ヘッドマーク掲出スケジュール」、「推し車両を見逃さない!車両運用スケジュール」など特典満載のファンクラブ、運営はDMMオンラインサロンで、申し込みも同サロンからです。

駅で教えてもらった最近の車両運用。旧南海の21000系と、東急田園都市線・目蒲線から青森県の十和田観光電鉄(2012年廃線)に転じた後、大鉄入りした7200系が普通列車に充当されます。

大鉄の車両基地・新金谷車両区に居並ぶ6000系(旧南海)、7200系(旧東急、旧十和田観光電鉄)、ブルトレEL・E31(旧西武)、16000系(旧近鉄)(筆者撮影)

21000系は愛称名「ズームカー」。デビューは1958年です。大鉄入りは1994年と1997年。大鉄でもすでに30年選手の超ベテランになりました。最近の電車に比べると乗り心地は少々?かもしれませんが、〝昭和の電車感〟が十分に味わえます。
ご存じの方も多いでしょうが、21000系の後継22000系は2023年と2024年、南海から千葉県の銚子電気鉄道に譲渡されました。大鉄、銚電とともに南海時代のグリーン調カラーを引き継ぎます。

LINEに公式アカウント

もう一つの推しは、LINE公式アカウント「大鉄members(メンバーズ)」。駅利用に連動してデジタルマイルを進呈するほか、クーポンプレゼントもあります。

車両ファン要注目は、12系客車の座席オーナー制度。地方私鉄に広がるマクラギオーナーの車両版で、有料オーナーになると(購入すると)、座席背もたれにオーナー名がプリントされます。申し込みは大鉄オンラインショップから。「川根路で自分の名前に会いに行く旅」、ありかもしれませんね。

「応援鉄ツアー」が推し

大鉄に続いて、グループの大鉄アドバンスを表敬。旅行業やバス・タクシー事業を手がけます。アドバンスで企画運営を担当する山本豊福さん、大鉄の名物広報マンに一推しツアーを聞きました。

山本さんはNHKラジオの深夜放送「ラジオ深夜便」に、地域情報リポーターとして登場します。地域やローカル線との縁を生かして2023年から定期的に開催するのが、その名も「応援鉄ツアー」です。

静岡をベースに遠くは九州、山陰、北陸方面などに遠征。くま川鉄道(熊本県)、一畑電車(島根県)、富山地方鉄道などに乗り鉄・撮り鉄します。キャッチフレーズは「乗って応援!」です。

遠鉄EL28 2。大正年間に輸入されたイギリス生まれの凸形ELで、旧豊川鉄道、旧鳳来寺鉄道から国鉄を経て遠鉄に譲渡されました。現在は遠州西ケ崎駅に留置されます(画像・大鉄アドバンス)

参加者募集中のツアー第7弾は、2026年4月11~12日に1泊2日で地元・静岡のローカル線をハシゴ。大鉄、遠州鉄道(遠鉄)、天竜浜名湖鉄道、そして佐久間線に乗り鉄・撮り鉄します。

遠鉄1000系電車が「団体」の方向幕で貸切運行されます(画像・大鉄アドバンス)

ラストの佐久間線は、もちろん現存しません。国鉄時代に計画・着工されながら開業しなかった未成線。ツアーでは遺構を訪ねます。

国鉄の未成線・佐久間線の土木遺構。路線は遠江二俣(とおとうみふたまた)~中部天竜約35キロ。1967年に着工、1980年に工事中断しました(画像・大鉄アドバンス)

いずれにしても、大鉄沿線をはじめとする静岡は観光資源が豊富です。静岡は東京~富士山~京都、大阪の訪日外国人ゴールデンルート上にあります。山本さんは、「静岡・富士山インバウンドを定着させたい」と意気盛みました。

千頭へは家山で代行バスに乗り継ぎ

新堀さん、山本さんとの話が長くなってしまいましたが、いよいよ新金谷から大井川本線に乗車。乗車日の運用車両は旧南海21000系の川根温泉笹間渡行き。大鉄は2022年9月の台風15号で被災し、川根温泉笹間渡~千頭(19.5キロ)が3年以上経過した現在も不通で終点です。

乗車列車は2両編成で、1両当たりの乗客は20人弱といったところ。アプト区間のある井川線(南アルプスあぷとライン)の起点・千頭へは、途中駅の家山でバスに乗り継ぐ必要があります。

川根温泉笹間渡はホーム1面1線で、駅にはギャラリーが併設されます(筆
者撮影)

家山で多くの乗客は下車しましたが、筆者はそのまま終点の川根温泉笹間渡まで乗車。
駅近隣には道の駅「川根温泉」、日帰り温泉施設「川根温泉ふれあいの泉」、「川根温泉ホテル」などがあって、終日楽しめます。ホテルは大鉄が運営受託。「SLが見えるホテル」としてファンに知られます。

取材当日は運休だったEL急行。大井川本線一番の撮り鉄スポット・大井川第一橋りょう(抜里~川根温泉笹間渡)を渡ります。筆者には鉄道模型のように見えてしまうのですが……(画像・大井川鐵道)

道の駅で特産の茶そばを味わった後、島田市の自主運行バスでJR島田駅へ。バスは山間地の集落を縫うように走り、大鉄とは違った沿線の表情を感じさせてくれます。季節的には2月は観光のオフシーズンかもしれませんが、大鉄や川根路はわざわざ出かける価値のあるエリアのように思えました。

記事:上里夏生

【関連リンク】