標準軌の「十国峠ケーブルカー」にも気軽に乗れる 「Izuko」Phase2取材会 ~熱海編~

2019.12.21

十国峠ケーブルカー 日金号

伊豆箱根鉄道の十国峠ケーブルカー(十国鋼索線)は標準軌(広軌)のケーブルカーです。日本のケーブルカーの軌間は1,067mmの「狭軌」が主流であり、1,435mmの標準軌を採用しているのは、ここと能勢電鉄の妙見の森ケーブルのみです(2019年12月現在)。

熱海・箱根方面から乗りに行けますが、現在は台風による影響で静岡県道20号(熱海-箱根線)の道路が一部不通になっており、公共交通機関を使うのであれば熱海から伊豆箱根バスに乗る必要があります。

他の鉄道路線とつながっているわけでもないため、単独で乗り潰そうとすると若干の(心理的な?)ハードルの高さを感じる十国峠ケーブルカーですが、実は最近「Izuko」を利用することで気軽に乗れるようになりました。

「Izuko」Phase2 現地取材会

Izuko Phase1のおさらいとPhase2、ひいては日本の観光型MaaSの展望に関する説明が行われた

2019年12月10日(火)、熱海~下田でIzuko現地取材会が開催されました。

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現在伊豆エリアでは、東急電鉄、JR東日本、ジェイアール東日本企画と伊豆の皆様方により、「観光型MaaS」の実証実験が進んでいます。

実証実験第1弾ではIzukoというスマートフォンアプリを開発・提供。アプリ経由でデジタルフリーパスなどを購入して「画面を見せるだけ」で電車や路線バスに乗れますよ、観光施設などでも割引が受けられるんですよ、というスタイルで進められていました。

想定より早いペースで2万DLを突破するなど実証実験自体は順調に成果を出しているように思われましたが、どうやら「アプリのDL方法が分からない」「画面の見方や操作方法が良くわからない」といったハードルがあった模様で、デジタルフリーパス等の売り上げ自体は芳しくありませんでした。

「そもそもアプリでいいのか?」という根本的な問い

2019年12月から始まった実証実験第2弾では「アプリ」をやめてウェブブラウザシステムに移行。UIも直感的に分かりやすいように改善しています。その他にも「自宅のテレビからAIオンデマンド乗合交通を配車する」などの新機能を加えたり、電車やバスに乗れるエリアを拡大したり、新たな観光施設を参入させるなど、サービスのグレードアップを図っているようです。

取材会では、記者は「十国峠ケーブルカー」(熱海)と伊豆高原の温泉やカフェといった「Phase2で新たに加わった場所」を重点的に巡り、新生「Izuko」の使い心地を試してみました。記事その1ではまずIzukoを使って「十国峠ケーブルカー」に乗るにはどうしたら良いか、といった点をレポートしていきたいと思います。

前準備:Izukoに会員登録し、熱海へ

横浜から伊豆方面へ向かう踊り子号(2019年8月)

十国峠に行く前に2つほど注意点をば。

Izukoには様々なデジタルフリーパスやチケット類がありますが、これらは東京など他都市から熱海や伊東・伊豆などのエリアに向かうために使うものではありません。基本的には伊豆エリアに到着してから周辺を周遊するのに使うものです。熱海へは普通に電車で向かいましょう。

また、Izukoを使用するためには事前に会員登録し、クレジットカードを設定しておく必要があります。支払いの際はセキュリティコード(クレジットカードの裏側に書かれている三・四桁の数字)の入力が求められますので、それだけは頭に入れておきましょう。

注)12月21日13時20分…….セキュリティコードに関する記述を一部修正いたしました。ご指摘ありがとうございます。

熱海から十国峠へ

熱海に到着したらIzukoのメニュー画面から「観光チケット」を選び、「熱海エリア」を選択。観光スポット地図に「伊豆箱根鉄道十国峠ケーブルカー」と「アカオハーブ&ローズガーデン」が乗っており、各施設の詳細が表示されています。

様々なエリアの観光チケットを購入できる

今回購入するのは”「十国峠」ケーブルカーパック(絶景富士山乗車券)” ……絶景富士山乗車券とはまたすごい名前ですが、これは熱海駅~十国峠登り口までの「伊豆箱根バス」と「十国峠ケーブルカー」往復1回分がセットになったもので、お値段は大人1,200円小児600円。熱海駅~十国峠登り口までの片道バス運賃が650円(往復1,300円)、ケーブルカーの往復1回分が730円なので、熱海→十国峠→熱海と往復すると830円ほどお得になります(価格はいずれも2019年12月のもの)。

熱海から十国峠への道行きとケーブルカーの往復がセットになっている

購入すると「観光チケット」「交通チケット」からチケットが使用可能に。ここはちょっと分かりにくいのですが、伊豆箱根バスに乗る際は「交通チケット」から「伊豆箱根バス 熱海駅~十国峠登り口」を選択します。するとチケットがアクティベート(有効化)されてバスがぶろろ~っと走る画面が表示されるので、これを運転手さんに見せましょう。あとは40分ほど揺られて十国峠登り口まで向かうのみ。

画面を提示すれば乗車できます

バスって場所によって乗り方や支払いタイミングが異なりますし(初めて東京に来たときはバス運賃前払いに大変困惑しました……)、うっかり小銭がないときに乗ってしまうとタイミングを見計らって両替しなければならない、といった細々としたハードルがあるんですよね。そういう心理的な壁を取っ払って「見せるだけ」で済ませられるのはデジタルフリーパスの強みではなかろうかと思います。まあ、電池切れは怖いのですが。

スタンプを押してもらいケーブルカーに乗ろう

駐車場からしてすでに景色が良いのですが、残念ながらこの日は曇天でした

40分ほどバスに揺られて十国峠登り口へ到着。乗車口まで行くと、今度は「観光チケット」から当該のチケットを選択して提示します。画面にスタンプを押してもらうと、アニメーションが流れてデジタルスタンプが表示されました。

画面にポンとスタンプを押してもらうと……
アニメーションが流れて電子スタンプが表示される

無駄な機能のようにも見えますが、こうした直感的で視覚的な「分かりやすさ」は利用者・事業者双方ともに楽しいもの。また、仮に事業者側が最新のデジタルシステムに不慣れであっても、このような直感的なUI(ユーザーインターフェイス)であればとっつきやすく、導入しやすいというメリットがあるようです。

首都圏に住んでいるとあまり実感できませんが、地方の観光地ではまだまだスマートフォンは普及していませんし、最新の技術と日常的に接する機会もそう多いものではありません。MaaSという比較的新しい概念を普及させるには、視覚的な工夫や直感的で分かりやすいUIが必要ということでしょう。

軌間の広さは1,435mm

ケーブルカーについては冒頭で説明した通り、日本で2つだけの標準軌の鋼索線です。車両は「日金号」と「十国号」のみ。我々取材陣は「日金号」の方に乗せてもらいました。巻き上げ機は明治時代のものを使っており、車両自体は昭和31年製というから大したものです。

レトロ感が漂う
最大乗車人員96名
全長316m、標高差101m

乗車時間は2分30秒~3分ほど。最近は犬と一緒に乗車される方も多いようで、山頂の景色だけでなく「十国峠ドッグラン」が大きなウリだそうです。

山頂には他にも右大臣実朝の歌碑などがある
台風の影響もあり平日は閑散としている 晴れた日には富士山や東京スカイツリーも見られるのだとか

「十国峠」の名前の由来は「伊豆・駿河・遠江・甲斐・信濃・武蔵・上総・下総・安房・相模」が眺められることから。取材時はあまり天気が良くなかったのですが、雲間からちらりと富士山が覗いていました。

360度素敵な景色が眺められる十国峠は霧の深い日にも幻想的な光景を見せてくれましたが、これは是非とも晴れの日に来たかった……という”悔い”が残ります。東京から熱海まで1,980円、「Izuko」の観光パスが1,200円とおよそ3,000円程度で堪能できるのですから、ゲーブルカー乗り潰しといった他の目的なしでもふらっと訪れたいですね。

十国号とすれ違う瞬間

十国峠はこれでおしまい。「Izuko」の使い方を探る取材会、第2弾は伊豆高原です。「Izuko」を使った電車の乗り方なども解説していきます。

記事/写真:一橋正浩


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