前回の「熱海編」(https://tetsudo-ch.com/9938374.html)に続き、「Izuko」Phase2取材会の記事をお届けします。

伊豆高原エリアではこれまでも「伊豆シャボテン動物公園・伊豆ぐらんぱる公園」の観光チケットを扱っていましたが、「Izuko」Phase2では「ケニーズハウスカフェ」(伊豆高原本店)と「立ち寄り温泉 伊豆高原の湯」が新たにサービスに加わったということで、こちらの取材に伺いました。

デジタルフリーパスで電車に乗ろう

Izukoで交通チケットを買おう 熱海~伊豆高原ならIzukoプチがおすすめだ

熱海から伊豆高原までは「Izuko」のエリア内なので、デジタルフリーパスを使って電車に乗ることができます。このデジタルフリーパス、今までは「Izukoイースト」と「Izukoワイド」の2種類しかなく、今回のように「熱海から伊豆高原までは行きたいけど伊豆急下田まで行く予定はない」といった旅程では若干の使いにくさがありました。

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Phase2ではもっと狭い範囲を気軽に旅したいという方向けに、新たに4つのデジタルフリーパス「Izukoプチ」「Izukoグリーン」「東海バス熱海エリア湯~遊~バス フリーきっぷワイド(一日乗車券)」「伊豆箱根バス熱海エリア一日フリーパス(熱海満喫乗車券)」が登場しています。

今回の取材のように「熱海~伊豆高原」の範囲で楽しむなら「Izukoプチ」が便利。広範囲のデジタルフリーパスより安上りですし、区間内であれば特急「踊り子号」の乗車券としても使えるようです。ただし特急券は別途買い求める必要があります。

有効期間は2日間。翌日に原稿を書きながら「あれ? 使ったはずなのにIzukoプチが消えてない?」と不思議に思っていましたが、2日間乗り放題になると1泊2日の旅行にも使えて便利ですね。

車内にも広告、伊豆高原駅では増解結の瞬間も

早速「Izukoプチ」を購入。「交通チケット」から有効化し、黒船電車がすい~っと進んでいるページを熱海駅の改札口で提示します。駅員さんも慣れているのか、特にひっかかることもなく改札を通れました。

熱海から伊豆高原へ向かう電車内の中吊り広告にもIzukoのものがあり、QRコードを読み込むとIzukoのサイトへ遷移出来るようになっています。

中吊り広告の左下にIzukoのマークとQRコードがついている
QRコードを読み込むとIzukoの情報ページへアクセスできる

降りるときも改札口で「Izuko」の当該ページを見せればOK、なのですが……その前にちょっと伊豆高原駅のホームに降りて辺りを見てみます。

伊豆高原駅には車両基地もあり、訪れるタイミング次第なところはありますが、連結や切り離しの瞬間に出会うこともあります。伊豆高原から伊豆急下田方面は3両、熱海方面は6両で運転するためですね。駅員さんの邪魔にはならないように、そっと増解結の様子を見せていただきましょう。

かの「ザ・ロイヤルエクスプレス」も停車中
帰りに撮ったもの 伊豆高原駅やまも口(南口)を出て線路沿いを歩くと懐かしの100系電車の姿が

観光チケットを使ってみよう

今回は伊豆高原駅やまも口から徒歩で行ける場所を訪れます

朝6時頃の電車に乗って伊豆に来たので大分疲れがたまってきました。というわけで早速伊豆高原駅やまも口を出て徒歩五分ほどの「立ち寄り温泉 伊豆高原の湯」へ。

すぐ隣の「うまいもん処」では美味しい地元の魚介類をふんだんに使った海鮮丼などを提供中。丼だけなら2,000円弱、味噌汁を変更したり伊豆高原ビールを付けたりしても2,000円~3,000円で豪華な昼食をいただけます。なお、伊豆高原の湯に入ると食事がお得になるちょっとした特典がもらえたので、先に温泉に入ってからのお食事がおすすめです。

伊豆の地魚入り特上海鮮どんぶり 味噌汁はカニと甘海老頭汁に変更

お食事を済ませてから温泉へ。Izukoの「観光チケット」→「伊東エリア」→「体験・飲食券」から1枚500円の「観光チケット」を2枚購入し、「立ち寄り温泉 伊豆高原の湯」のカウンターで提示。十国峠ケーブルカー同様にスタンプを押してもらいます。

スタンプの柄は十国峠のものとは異なる 全て集めて回るのも楽しそうだ

入浴料は本来1,000円でタオル・バスタオルは別料金のところ、Izukoの観光チケット2枚(1,000円)を使った場合はタオル・バスタオルがついてきて1,000円。330円ほどお得になるようです。

ご担当の方に色々とお尋ねしたところ伊豆高原の湯では顔の泥パックが評判で、男女問わず楽しんでいただいているとのことでした。温泉のほかにも卓球台やマッサージコーナー、畳寝そべり処もあり、休憩所の棚には大量のマンガが。

高性能マッサージ機は有料

お湯の方は露天風呂3種にサウナ付き、内風呂サウナ水風呂完備。当然ながら定番のコーヒー牛乳も置いてある。みなさん1時間~1時間半ほどくつろいで出て行かれるそうですが、温泉に入れるマンガ喫茶と考えると異様にコスパが良いので時間の許す限り滞在していきたかった、と切に思います。

泥顔パックは特に人気らしく、撮影も可能だ

温泉の後はカフェで優雅なひと時を

ケニーズハウスカフェ外観

ゆっくりと温泉に浸かった後は最後の取材地である「ケニーズハウスカフェ」へ向かいます。「立ち寄り温泉 伊豆高原の湯」と伊豆高原駅を挟んで向かい側。温泉からカフェまでは徒歩で20分ほどと結構遠いのですが、行く道の途上には「伊豆テディベアミュージアム」などが並んでおり、合間合間に観光施設を見学しながら向かうと良さそう。ちなみに「伊豆テディベア・ミュージアム」もIzukoプチを見せるとちょっとだけ入館料がお安くなります。

池袋にも支店はありますが、「ケニーズハウスカフェ」の本店はここ伊豆高原。リゾート感溢れる佇まいのお店で、天井の高いログハウス店舗内も中庭のテラス席も素敵です。数あるメニューの中でも「ビーフシチュー」と「ソフトクリーム」が二本柱となっています。こちらでは「観光チケット」1枚(500円)で「あげぱんソフト」、2枚で「バナナチョコワッフル」が食べられます。どちらも本来の値段よりはお安く提供しているとのこと。

熱々の揚げパンと冷たい生クリームの相性が抜群

Izuko Phase2に入ったばかりでまだ日も浅いのですが、「ケニーズハウスカフェ」ではすでに観光チケットを利用するお客さんがたびたびご来店されているようです。観光チケットを使われる方も「あげぱんソフト」「バナナチョコワッフル」だけでなくその他のメニューも一緒に頼んでいるとのことで、話を聞く限り集客のみならず客単価の面でもIzukoによる効果が表れているように感じられます。

余談ですが、「あげぱんソフト」は子供時代にトリップしてしまいそうなシナモンの香りがたまりません。熱々の揚げパンで挟んだ冷たいソフトクリームが垂れ落ちてしまう前に急いでいただいたのですが、太ると分かっていても食べたくなるタイプの悪魔的なスイーツでして、風呂上がりに食べるには危険過ぎる一品でした。

観光地にとって鉄道はなくてはならないもの。では、Izukoは?

新規追加スポットを巡ってIzukoの体験取材はこれでおしまい。熱海までIzukoプチで帰り、一旦改札を出てから東海道線と東京メトロを乗り継いで帰宅しました。Izuko Phase2は洗練されたインターフェイスとお得な料金が好感触。物珍しさだけではなく、サービスの質で「客を取りに来た」という印象を抱いています。

ただ、デジタルフリーパスやチケット類を「当日にならなければ買えない(しかも購入時に毎回セキュリティコード入力を求められる)」のは減点要素。その他にも、宿泊施設との連動が弱いことから、東京から日帰り出来てしまう伊豆での宿泊需要の喚起につながりにくいという課題も残っています。とはいえアプリを脱却して細かい変更が容易なブラウザベースにしたことで、駅や周辺の観光施設・宿泊施設と連動したキャンペーンも打ちやすくなりますので、この点はいずれ改善されるでしょう。

現地で各施設の担当の方にお話を伺いながら感じたのは、観光地における「鉄道」の重要性。観光とは切っても切れない土地柄であるだけに、観光の要である「交通」と紐づけたキャンペーンは大きなインパクトを持っています。観光客の間でIzukoが広まればそのぶん連携する観光施設への送客効果・宣伝効果は高まりますし、伊豆エリアの方々も公共交通機関と先進的なサービスに密かに期待しているのではないでしょうか。

Izukoは日本における観光型MaaSの先駆けとして伊豆を盛り上げることができるのか、それを見て他社のMaaSはどう変わっていくのか。観光型MaaSの在り方を左右するサービスに要注目です。

記事/写真:一橋正浩