軽自動車の黄ナンバーを付けるグリスロ。規定上ドアはありませんが、雨の日はビニール幌を降ろします(筆者撮影)

鉄道会社が運行するのは「列車」というのは当たり前すぎる話ですが、ここ数年、オンレール以外のモビリティ(移動サービス)に進出する事業者が増えています。昔は乗車駅から降車駅まで利用客を運べば鉄道の役目は終わりだったのですが、今は自宅から乗車駅まで、さらには降車駅から最終目的地までの移動手段を提供しなければ、利用されない時代になりつつあるようです。

最近の話題から、JR東日本の小型カート「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」、JR西日本の電動キックボード「LUUP(ループ)」、京浜急行電鉄の「空飛ぶクルマ(eVTOL)」の3題を取り上げ、それぞれの戦略などを探りました。

小さな移動サービスでゆっくり近くまで

EV(電気自動車)、エコカー、サポカー(安全運転サポートカー)、カーシェア(カーシェアリング=会員制レンタカー)。新しいクルマ、そしてクルマの使い方もいろいろありますが、国が普及に力を入れるのがグリーンスローモビリティことグリスロです。主な特徴は、「時速20キロ未満で走行」、「動力源はEV」、「小さな移動サービス」の3点。「ゆっくり、余裕をもって、近くまで」出掛けるための移動手段で、従来の交通機関が目指していた「速く、時間通りに、遠くまで」とは真逆です。

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グリスロに似るのはゴルフ場のカート。といっても、ゴルファー以外の方は分かりにくいかも。いくつかの遊園地には、園内の移動手段として同種のカートが用意されていたりもします。これがグリスロです。

なぜ今、グリスロなのか。地方圏では人口が減少して、鉄道やバスの経営を成り立たせるのが難しくなっています。公共交通が撤退すると日々の買い物や通院に困り、たちまち移動制約者になってしまう。地方は、マイカーがないと生活できない地域が多いのですが、たとえ免許を返納しても暮らしが成立する。そのために必要なのがグリスロです。