JR東日本が高輪ゲートウェイ駅発着コース設定

高輪ゲートウェイ駅に到着したグリスロ。駅では、品川開発プロジェクトが進行中です

2021年11月24日からグリスロの実証運行に乗り出したのがJR東日本です。期間は12月6日まで。東京都港区の高輪・白金・白金台エリアで、高輪ゲートウェイ駅やグランドプリンスホテル高輪などを出発とゴールとする3つのルートを設定。体験乗車の名目で乗客を募り、無料運行しています。

運行主体は港区街づくり支援部地域交通課で、JR東日本、KDDI、タクシー会社系のkmモビリティサービスの3社は協力会社として参画します。KDDIは通信系サービスを提供、kmはドライバーを派遣してグリスロを運転します。

港区ではもう一つ、浜松町・竹芝エリアでもグリスロが実証運行され(11月12~22日)、こちらはJRに代わり東急不動産が協力会社に名を連ねました。

新しい街づくりにプラスアルファの価値を

グリスロの事業説明会で実証運行の狙いを紹介するJR東日本事業創造本部の髙木浩一担当部長、港区の岩崎雄一街づくり事業担当部長、東急不動産都市事業ユニットの小山伸一統括部長=写真右から=。髙木部長は品川開発プロジェクトの目標を、「100年先を見据えた心豊かな暮らしづくりの実験の場」と言い表しました(筆者撮影)

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JR東日本が実証運行に参画したのは、本サイトでも何回も紹介させていただいている「品川開発プロジェクト」で、高輪ゲートウェイ駅を中心とする新しい街づくりに挑戦するのが主な理由です。従来の沿線開発は、駅を開業して住宅やオフィスビルを建てて分譲すれば終わりだったのですが、人口減少や高齢化が本格化する社会にあっては、住みたくなる、働きたくなる街づくりが求められます。

東京のど真ん中の高輪・白金エリアは人口減少はないのですが、高齢者人口約1万2000人、高齢化率19.2%と都内では比較的高く、道幅の狭い坂道が多いなど、グリスロが利用されやすい環境にあります。そうした中、国土交通省の「令和3年度グリーンスローモビリティ実証調査支援事業」に港区が選ばれ、実証運行につながりました。

実証後、もちろん高輪ゲートウェイ駅発着でグリスロが本格運行される可能性もありますが、JR東日本としては、「駅からの2次交通が不便な地方圏にグリスロを走らせ、鉄道の利用促進につなげたい」というのが本当のところでしょう。

高輪ゲートウェイ駅の未公開エリア ばっちり見せます!

JR東日本はグリスロに、地域住民の移動手段以外の利用方法も託します。それは観光。高輪エリアでグリスロを実証する理由に、「エリア内に多くの社寺や観光・教育施設がある」を挙げます。

グリスロの実証ルートに、鉄道ファンを意識したコースがあったので紹介しましょう。コース名は「高輪ゲートウェイ駅見学」。グランドプリンスホテル高輪が発着で、ゲートウェイ駅を約1時間にわたり見学。詳細は不明ですが、駅の未公開エリアも見られるそうです。

スペック的にはグリスロは4人乗りで、ドライバーを除く3人が乗車。乗車時はシートベルト着用で、大通りを避けてルート設定されます。

全国をみれば、JR九州グループのJR宮崎シティ、京浜急行電鉄、東急などが地域のグリスロ実証に参画。今後、本格的に定着するかが要注目です。