ICTやMaaSでスムーズな来場を実現

大阪・関西万博で実践される次世代技術や社会システム。交通分野ではMaaSや空飛ぶクルマといった項目が並びます(資料:(公社)2025年日本国際博覧会協会)

ここからは鉄道に関連する話題。万博協会は円滑な来場のため、鉄道、道路、海路、空路といった既存交通インフラを最大限活用したアクセスルートを計画します。それぞれのルートをバランスをとりながら利用してもらうため、ICT(情報通信技術)を駆使して適切なルートや混雑状況などを案内します。

大阪府内の企業には、時差出勤やテレワークの活用を呼びかけます。ピーク時間帯の交通量削減を図るとともに、鉄道やシャトルバスへの乗り換えが安全・円滑に進むよう、交通の総合情報基盤・MaaSなどの新しい技術を積極的に取り入れながら、 関係機関や交通事業者と連携して混雑解消に取り組みます。

大阪中心部を東西に縦断、鉄道10線に接続(メトロ中央線)

直接の会場アクセスになるのが、Osaka Metro中央線(メトロ中央線)です。現在の起点のコスモスクエアから、会場の夢洲まで鉄道新線(北港テクノポート線)を延伸して、新しい駅を建設します(仮称・夢洲新駅)。万博の会期中、メトロ中央線の輸送力が増強されます。

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メトロ中央線の歴史をたどります。2018年4月の民営化までは、大阪市交通局の市営地下鉄でした。路線はコスモスクエア(大阪市住之江区)―長田間(大阪府東大阪市)間の17.9キロ。両端を含めて14駅あります。電化方式は直流750ボルトの第三軌条方式です。

中央線は、1961年に最初の区間が開業。2005年に当時の起点だった大阪港からコスモスクエアまでの区間が、大阪市が出資する第三セクターの大阪港トランスポートシステムから大阪市交通局に移管されて、現在の路線になりました。

他路線に接続するのは全部で10駅。コスモスクエアで南港ポートタウン線(新交通システム=正式には自動案内軌条式旅客輸送システム)、弁天町でJR大阪環状線、九条で阪神なんば線、阿波座で地下鉄千日前線、本町で地下鉄御堂筋線と四つ橋線、堺筋本町で地下鉄堺筋線、谷町四丁目で地下鉄谷町線、森ノ宮で地下鉄長堀鶴見緑地線とJR大阪環状線、緑橋で地下鉄今里筋線、高井田でJRおおさか東線(JRの駅名は高井田中央)、終点の長田では、近鉄けいはんな線と相互直通運転します。

近鉄けいはんな線は、長田―学研奈良登美ヶ丘間の18.8キロで、事業者が近鉄なのに架線がなく第三軌条という異色の路線です。

近鉄けいはんな線の終点・学研奈良登美ヶ丘に並ぶOsaka Metroの20系電車(左)と近鉄7000系電車(右)(写真: jnpi.photo / PIXTA)

メトロ中央線は「未来への路線」

メトロ中央線がどこか地味な印象を受けるのは、大阪市の都市構造にも理由があります。大阪の繁華街はキタ(梅田・大阪駅)、ミナミ(難波・心斎橋)の二極構造。ところが、中央線が通るのはキタ、ミナミの真ん中でビジネス街の本町。大阪・関西万博は、中央線がスポットライトを浴びる初めての大型イベントなのかもしれません。

Osaka Metroは中央線を〝未来への路線〟と位置づけ、新製車両でイメージアップを図ります。万博までに投入するのは、400系(6両23編成)と30000A系(6両10編成)。デビューは30000A系が2022年7月、400系が2023年4月を予定します。

Osaka Metro「30000A系」外観デザイン=イメージ=(画像:Osaka Metro)

新型車両は、本サイトで詳しく紹介済みなので繰り返しは避けますが、400系で特徴的な前面はガラス張りの展望形状、宇宙船を意識させる未来的なデザインです。2024年度中に400系電車の大阪港―夢洲新駅間で、自動運転の実証実験に乗りだすプランも明かされています。