鉄道模型メーカーのKATOは3月31日、2023年8月・11月発売予定の新製品を発表しました。その中には、戦前に登場し、国鉄末期に復活した電気機関車EF55形や、同機がけん引したイベント列車編成の旧型客車も予告されており、SNS上で大きな話題を呼んでいます。

(写真提供:KATO)

戦前に登場した流線形の電気機関車

今回の目玉となった「EF55 高崎運転所」(品番:3095・価格:15,180円)は、1986(昭和61)年に復活したEF55形1号機の仕様を再現したものです。

同機は1936(昭和11)年、昭和初期の世界的流線形ブームの真っただ中で登場しました。片側の前面は流線形、もう片方の前面は切妻形状という独特な外観を有し、唯一無二の存在感を放っています。当初は特急「燕」「富士」などを牽引していました。

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東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年に同機は一度廃車されましたが、準鉄道記念物として保管され、1986(昭和61)年に車籍復帰。それ以降、高崎線・上越線・信越本線を中心に客車を牽引し、2009(平成21)年に運行を終了しました。現在は大宮の鉄道博物館で保存展示されています。

今回KATOが発売するEF55は、1986年の車籍復帰後の仕様。付属の信号炎管と列車無線アンテナを取り付ければ(要加工、車体裏面にガイドあり)2002年以降の仕様に変更もできます。交換用のカプラーや、「高崎線開業120周年」「ありがとうEF55」など4種のヘッドマークも付属します。

鉄道模型ならではの問題点、解決策やSNSの反応は・・・?

しかし、流線形の先頭部では、先台車の先輪(前方の車輪)がスカートに覆われているため、実物よりも半径の小さいカーブを走行する鉄道模型ではスカートと車輪が干渉してしまいます。KATOは、先台車を実車同様に再現しつつ、最小通過半径R282を実現すると発表しています。

それを可能にするのが、回転軸の位置の違い。通常、台車は中心を軸に回転しますが、このEF55においては先台車より前に回転軸を位置づけているとのこと。すると、台車の前方より後方のほうが大きく首を振るようになり、前方の首振りが抑えられます。これにより、先輪と車体のクリアランスを確保しています。

さらに、カーブ進入時に動力台車全体が若干後ろに後退する構造を採用し、カーブを曲がりやすくしているようです。KATO公式サイトのEF55特設ページでは、これらの機構や、同機の試作品がカーブを通過する写真が詳細に取り上げられています。

(写真提供:KATO)

ちなみに、EF55自体は、過去にマイクロエースとワールド工芸が製品化したこともあります。 しかし、スカートと車輪の干渉を防ぐためか、マイクロエースのEF55は、先輪がダミーとなり、フランジが省略されています。発売も10年以上前のため、中古品でも見つけるのが難しいかもしれません。ワールド工芸の場合、先輪はダミーではないものの、車体が真鍮製組立キットなので、ライトユーザーには向きません。

こうした前例もあってか、KATOのEF55の製品化発表は、SNS上で驚きや喜びの声を持って迎えられました。すでに予約したというユーザーも見られます。発売後、早いうちに完売になるのではと予想するユーザーや、実際に購入できた場合に牽引したい・並べたい車両や、他社製品との比較を考えるコメントもありました。また、筆者がよく足を運ぶ模型店でも、EF55の予約に訪れたと思われる人が見られました。

中には価格について言及するコメントも見られ、機関車1両で1万円超えを高いと感じる人も。しかし、自分ではんだ付けや塗装を行う真鍮キットと比べても価格が大きく変わらないため、今回のKATOの価格設定をむしろ安いと思った人も少なくないようです。