有楽町線に公共交通空白地帯解消の狙い

ここまで、有楽町線と南北線の延伸線を同一のトーンで紹介してきましたが、2つの新線には若干の違いがあります。

南北線延伸線の建設目的は、メトロ南北線と都営三田線、そして南北線と相互直通運転する埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線などから品川への直行誕生というほぼ一択です。これに対し、有楽町線の延伸線はメトロ半蔵門線や東武スカイツリーライン沿線から臨海部への短絡ルートという以外に。公共交通空白地帯解消につながります。

前にも紹介したように、有楽町線の延伸線は全線が江東区内。同区は、延伸線の早期着工を東京都などに働き掛けていました。

「多様なライフスタイルに合わせた生活環境」

江東区は2023年3月、「江東区地下鉄8号線沿線まちづくり構想」を策定。地下鉄8号線とは、有楽町線小竹向原―新木場間の国の都市交通審議会レベルの路線名です。

構想では、「多様なライフスタイルに合わせて、健康で快適に過ごせる生活環境」、「誰もが快適に移動できる利便性の高い交通環境の実現」などを地下鉄新線開業に向けた地域の整備指針とします。

両端の豊洲、住吉を含め延伸線5駅の未来図をみれば、豊洲は「水辺環境を生かし、持続的に発展する安全・安心な次世代都市」。有楽町線やゆりかもめとともに、新しい交通手段として舟運に注目。海陸の交通結節点を目指します。

有楽町線延伸線が開業すれば、陸海空の交通結節点に成長する可能性を持つ豊洲駅周辺の将来イメージ(資料:江東区地下鉄8号線沿線街づくり構想)

新駅の枝川は、「水辺に囲まれた回遊の拠点」が目標。延伸線開業を機に、商業機能の誘導や現在の落ち着いたまちとあらたなにぎわいの調和を志向します。

メトロ東西線と接続する東陽町は、「水辺と緑あふれるウォーカブルな交流都市」が指針。ウォーカブルは、「歩きたくなる街」といった意味合いです。

新駅の千石は、「みどりが連なり、下町人情あふれる安心快適な定住拠点」。下町情緒を残した暮らしやすい街づくりを進めます。

住吉はメトロ半蔵門線と有楽町線、都営新宿線の地下鉄3線が集積する交通の要衝。街の将来像も、ずばり「高い利便性の生活都市」です。

なお、東陽町の駅名は都の資料では仮称ですが、江東区の街づくり構想では正式な駅名とされています。

記事:上里夏生

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