
東京駅から銀座、築地、勝どき、晴海を経て有明・東京ビッグサイトを結ぶ新線計画「都心部・臨海地域地下鉄(臨海地下鉄)」にて、新設される駅の地下空間を、有事の際に身を守る「シェルター(避難施設)」として整備する検討が本格化しています。
東京都が2026年8月に開催した検討会合にて、政府の「避難施設(シェルター)確保に関する基本方針」を踏まえ、駅整備に伴って生じる地下の余白空間へ避難機能を付加することを前提に協議を進める方針を確認しました。背景には、政府が2026年3月31日に閣議決定した「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」があります。
この記事では、大規模マンション群「晴海フラッグ」や築地市場跡地の大規模再開発を控える湾岸エリアの地下で進められる、地下駅のシェルターや、平時の賑わいと有事・災害時の安全を両立するデュアルユース構想、全7駅の想定ルートなどを解説します。
臨海地下鉄は東京〜有明・東京ビッグサイトの7駅、銀座・築地・勝どき・晴海・豊洲市場を通る
都心部・臨海地域地下鉄は、東京駅(仮称)から有明・東京ビッグサイト駅(仮称)までを結ぶ構想の地下鉄です。都の事業計画検討会が2022年11月25日に事業計画案をまとめて公表しました。

事業計画案で想定している駅は、北から東京、新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場、有明・東京ビッグサイトの7駅(いずれも仮称)です。いまは鉄道の駅がない晴海や、ゆりかもめの駅しかない豊洲市場の周辺にも駅が置かれ、都心と臨海部を地下でまっすぐ結びます。
2024年2月には、東京都、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)、東京臨海高速鉄道の3者が、事業化に向けた事業計画の検討で合意しました。整備に関することは鉄道・運輸機構、営業に関することは、りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道が検討に加わっています。

また、秋葉原駅から東京駅方面へのつくばエクスプレス(TX)の延伸とあわせた検討も続いています。
都心部・臨海地域地下鉄(事業計画案)
区間:東京(仮称)~有明・東京ビッグサイト(仮称)
駅(仮称):東京、新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場、有明・東京ビッグサイト
事業計画案の公表:2022年11月25日(東京都の事業計画検討会)
事業計画の検討:東京都、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、東京臨海高速鉄道の3者で合意(2024年2月)

地下の“余白”をどう使うか?「避難施設としての機能付加を前提」
検討の場は、臨海地下鉄の沿線区などと、駅とまちの連携を話し合うために都が2024年に設けた会議です。第1回は2024年8月29日に開催され、これまでに6回の会合を重ねています。
2026年3月18日(水)の第5回では、国が2025年5月に示した「将来の可変性・柔軟性を許容する余白を創出する」という考え方に沿って、地下鉄の整備に伴って生まれる地下空間の活用方針を詰めていくことを確認していました。
そして8月20日(木)の第6回で、この余白空間の使い道が一歩具体的になりました。議事概要には、国が新たに示した「主要駅を新規に建設する場合にシェルターとしての活用を見据えた整備を推奨する」との考え方を踏まえ、「避難施設としての機能付加を前提とし、引き続き、検討を深度化していくことを確認」と記されています。
政府の基本方針は「主要駅を新しく建てるときはシェルター活用を見据えて」
都が踏まえた国の考え方は、政府が2026年3月31日に閣議決定した「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」に盛り込まれています。
基本方針では、速やかに遠くへ逃げることが難しい都市部などで、主要駅や大規模建築物の地下空間、地下駅舎、地下街、地下道、地下駐車場といった既存の地下施設を避難施設指定の中心として位置づけています。こうした場所で、数時間から1日程度、長くても数日程度の避難に対応できるよう、滞在機能を充実させることを推奨しています。
そのうえで、「主要駅や大規模建築物等を新規に建設する場合に地下空間が整備される際にも、シェルターとしての活用を見据えた整備を推奨し、積極的に働きかける」と明記しました。充実させる中身としては、避難する人を受け入れるスペースや備蓄倉庫、電気設備、簡易トイレや簡易ベッドなどの備蓄を挙げています。

地震などの自然災害の際に帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設としての役割も視野に入れ、平時の活用と両立させる「デュアルユース」も打ち出しています。臨海地下鉄の駅の地下空間も、ふだんは別の用途に使いながら、いざというときに避難の場所になる形が考えられます。
整備費は「幅広い受益者」で支える、沿線の開発事業者への受益還元も制度設計へ
第6回では、整備費の負担についても議論が進みました。都は、臨海地下鉄が沿線の区のまちづくり計画に掲げられた「交通」「防災」「環境」「経済」などの目標に役立つとして、整備の効果が区民などに及ぶことを確認しています。

沿線の開発事業者などを対象にした「受益還元方策」は、今後、制度設計を具体化していきます。会合では、既存の負担金制度との二重負担にならないようにすること、負担を求める範囲や期間を整理すること、集めた財源の使い道を明確に示すことなどの意見が出ました。
この流れは、国が2025年6月に示した「幅広い受益者により都市鉄道整備を支えていくことが重要」という考え方に沿ったものです。都は第5回の会合で、臨海地下鉄も幅広い受益者からの応分の受益還元で整備を支えていくことを基本的な方向性にしています。
第7回以降の会合は、検討の状況を踏まえて開催するとしていて、日程は決まっていません。
東京駅から銀座、晴海を経て東京ビッグサイトへ。ふだんは通勤やイベントの足になり、いざというときには身を守る場所にもなる地下鉄は、どんな姿になるのでしょうか。これからの検討に注目です。
(画像:鉄道チャンネル、東京都、PIXTA)
鉄道チャンネル編集部
(旅とおでかけ!鉄道チャンネル)