どうなる地方ローカル線 国の検討会が初会合 近江鉄道は経営の上下分離で鉄道存続を決定(後編)【コラム】

2022.03.21

近江鉄道は西武鉄道グループで、西武からの譲受車が活躍します。写真は彦根車庫(2019年7月に鉄道チャンネル編集部撮影)

【前回】どうなる地方ローカル線 国の検討会が初会合 JR2社は沿線自治体との話し合いの場を求める(前編)【コラム】
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国土交通省が2022年2月に有識者会合を設置して検討を始めた、地方ローカル線を考えるコラムの後編です。ローカル線の経営環境に明るい材料は見つけにくいのですが、仮に鉄道を廃止すれば復活はまず不可能。BRT(バス高速輸送システム)転換すれば移動手段は確保できるかもしれませんが、鉄道ファンの皆さんは違和感を抱くこともあるでしょう。

後編では検討会の資料から、鉄道とバスの走行キロあたり経費を比較。鉄道のコストは、バスの10倍以上というショックな数字も示されたのですが、その理由を考察しました。コラム後半では、鉄道事業者と地域が協力して鉄道存続を決定した、滋賀県の近江鉄道の事例を報告します。

大糸線の存続と利便性向上を求める

大糸線はJR東日本が運行する松本―南小谷間(70.1キロ)とJR西日本の南小谷―糸魚川間(35.3キロ)に区分されます。JR西日本区間は非電化で、定期列車はすべてワンマン運転です(写真:alps / PIXTA)

最初に、国の検討会をきっかけとしたトピックス。JR大糸線が走る長野県小谷村の村議会は、「鉄道を存続させた上で利便性を高める」を趣旨とする要望書を2022年3月2日、県に提出しました。

大糸線南小谷―糸魚川間(35.3キロ)を運営するJR西日本は、前編で紹介した通り2022年4月に輸送量の少ない線区の経営指標を公表する方針です。小谷村が求めるのは、降雪期も安定した列車運転に加え、糸魚川での北陸新幹線や、第三セクター・えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインへの接続改善です。

国鉄時代、鉄道とバスの線引きは「輸送密度1日4000人未満」

鉄道をバス転換する際の基準が示されたのは国鉄時代。輸送量の極端に少ない線区は「特定地方交通線」に選定されて、三セク鉄道やバスに転換されました。その際の、鉄道存続と三セク鉄道・バス転換の線引き基準は「輸送密度1日4000人未満」でした。

前編で紹介したように、JR西日本の在来線は、全体の約3割が輸送密度1日2000人未満です。国鉄時代の基準にならえば、JR西日本が運行する地方ローカル線の多くは廃止されてしまいます。もちろんJR西日本は廃止を前提とするわけでなく、現在の路線をできれば存続させたいと考えます。国の検討会には、沿線自治体と円滑に対話・協議するための枠組みづくりを求めます。

鉄道vs高速バスvsマイカー

中国地方にみる鉄道と高速バスの競合(資料:国土交通省の検討会提出資料)

鉄道の利用減は、人口減少とコロナだけが理由ではありません。国交省の資料に山陽と山陰地区の往来で、鉄道と高速バスを比較するデータがありました。山陽と山陰の主要都市間には多くの高速バスが運行され、鉄道と競合します。

所要時間が大きく変わらないなか、運賃はバスが安く、バスを選ぶ人も一定数います。国交省の資料にはありませんが、マイカーで移動する人も相当数いるはずです。

鉄道の経費はバスの10倍以上!?

鉄道とバスの走行キロあたりの経費比較(資料:国土交通省の検討会提出資料)

国交省の資料で、最も興味深いのが「鉄道とバスの走行キロあたりの経費比較」。詳細は表をご覧いただきたいと思いますが、JR旅客会社が列車を1キロ走らせるのに5354円かかるのに対し、バスはエリアによって違いはあるものの314~769円ですみます。

数字だけだと、「鉄道は何と不経済な乗り物か」となってしまいますが、話はそう単純ではありません。首都圏や関西圏の主要線区の列車は6~15両編成で運転されており、1両に直せばバスとほとんど変わりません。東京―大阪間のような大都市間は、バスだけで移動需要をまかなうのは到底不可能。大量高速輸送に特性を発揮する鉄道(新幹線)があってこそ、日本社会は成り立ちます。

もう一つ、忘れてならないのはインフラ部分の費用負担。鉄道会社が、線路など地上設備の維持更新費用を原則自社でまかなうのに対し、バスは多額の公費で建設された高速道路や国道上を走行します。

適材適所ではありませんが、人口減少に向かうこれからの時代、何が何でも鉄道という理論は成立しにくくなっています。国交省が考える、「運転免許を持たない高齢者も住み続けられる持続可能な地域づくり」に必要なのは、検討会の名称になった「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新」といえるでしょう。

次ページ「現状のままでは鉄道線の維持は困難」(近江鉄道)


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