ニューノーマル時代に対応する「ニュー・レールライフ」(JR北海道)

JR北海道が増備するH100形「DECMO」(デクモ)。JR東日本のGV-E400系をベースに、酷寒地仕様・両運転台化した電気式気動車です(写真:もりみと / PIXTA)

北海道外では経営難にばかり話題が集まりがちなJRですが、2031年度を目標年に経営自立に向けた自己改革に取り組みます。JR北海道の経営方針は、2019年4月に発表した「JR北海道グループ長期経営ビジョン・未来2031」。長期経営ビジョンの実行策として毎年度、単年度の事業計画を策定・公表します。

「令和4年度事業計画」で打ち出したのは、鉄道事業分野でのコロナ禍からの回復。ウィズコロナのニューノーマル時代への対応策を「New Raillife(ニュー・レールライフ)」と命名、コロナのような外的要因に見舞われても事業を維持できる「事業ポートフォリオの変革」を進めます。

経済用語のポートフォリオ変革は、「事業構造の変革」の意味合い。ホテル事業や不動産事業、小売業といった関連事業に鉄道と同じく力を入れ、相乗効果を生み出すニュアンスです。

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鉄道で取り組むのは、自然災害への対応。大雪で列車がマヒした今冬の雪害を教訓に、早めの運転規制や計画運休の実施、除雪体制強化、利用客への情報提供などを総合的に検討します。事業計画には、「災害級の事態が発生した場合の地域連携」も盛りこみました。地域の力も借りながら、鉄道への信頼を高めるねらいです。

鉄道の業務革新では、室蘭・苫小牧地区に、2022年度末までに2両編成のワンマン運転に対応する、新型電車14両の導入を計画します。車両関係の投資額は約80億円で、ワンマン電車のほか電気式気動車H100形、261系特急気動車を新製します。

瀬戸内国際芸術祭など大型イベントと連携(JR四国)

JR四国が構想する鉄道業務刷新のイメージ。自社、利用客の双方にメリットがあるチケットレス化・キャッシュレス化に取り組みつつ、線路と道路の双方を走れる軌陸型架線検測装置などで施設保守業務を効率化します(資料:「JR四国グループ事業計画2022 Good Challenge」)

JR四国も、最終のゴールはJR北海道と同じ2031年度の経営自立。〝Good Challenge(グッド・チャレンジ)〟の愛称名を付けた「JR四国グループ事業計画2022」は、はじめてJR四国本体とグループ企業をあわせたグループ経営計画としました。

鉄道事業の重点事項は、「収益のリカバリー(回復)」で、チケットレス、キャッシュレスといった新チケットシステムを採用。地域イベントの「瀬戸内国際芸術祭」(2022年4月14日~11月6日を3期間にわけ、香川県直島などで開催中)といった大型イベントとの連携や、新たな収益源の確保で、コロナ禍以前の収益水準への回復を目指します。

地元四国の方にとって気になるのは、運賃改定への言及かも。JR四国の西牧世博社長は2020年8月の会見で運賃改定の可能性に言及していますが、グループ事業計画2022には「運賃改定の検討を深度化」のワンフレーズが見つかりました。

山陽線主要貨物駅の災害対応力強化(JR貨物)

JR貨物が事業計画で打ち出した省エネを推進する設備投資=イメージ=(資料:「JR貨物2022年度事業計画」)

JR貨物の「2022年度事業計画」では、安全の確立を大前提に、脱炭素化、災害時などにも必要な輸送力を確保する事業の強じん化、鉄道コンテナ駅前後のアクセス部分を含む輸送シームレス化などに取り組み、「鉄道を基軸とした総合物流企業グループ」への飛躍をめざします。

貨物鉄道輸送では、特定荷主の貨物を積載した、貸切列車で拠点間を直結する、いわゆるブロックトレインの推進。事業強じん化では山陽線主要貨物駅の災害対応力を強化するほか、日本海縦貫線のう回運転に備えてEH500形電気機関車18両の改造工事完了などを予定します。

車両関係では、EF210形300番代電気機関車10両、DD200形ディーゼル機関車6両、DB500形入れ換え用機関車3両などを新製します。

記事:上里夏生