東京メトロ南北線の品川駅までの延伸工事に関して進展がありましたので、この機会に入札公告情報や東京都の都市計画案の説明資料を元に、この南北線の分岐線に関して記していきます。

東京メトロの品川駅付近の工事が動き出します

東京メトロ南北線の「7号線品川工区土木工事」が、2023年12月18日に一般競争入札で公告になりました。公告になったのは品川駅付近の開削トンネル工事になり、工期は101か月間(8年5か月間)の予定となっています。8月14日に入札公告となった白金工区の開削トンネル工事に次いでの公告となり、工事施工会社の選定を経た上で、着工となる予定です。

図:東京都・東京メトロ 南北線の分岐線の都市計画案の資料より

この南北線の分岐線(品川 – 白金高輪間)に関しては、南北線⽩⾦⾼輪駅で分岐し、品川駅⽅⾯に延伸を行い、新たに品川駅(仮称)を設置する計画です。計画区間は、起点となる品川駅から東京メトロ南北線の⽩⾦⾼輪駅間の約2.8kmのうちの約2.5kmの区間を地下式により、新たに都市⾼速鉄道第7号線分岐線として都市計画を定めるものになります。東京メトロが2022年3月28日付で国土交通大臣より許可を受け、総建設費が約1,310億円、開業目標を2030年代半ばとして工事が進むことになります。

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ルートに関しては、品川駅における他の鉄道路線との乗り換え利便性や、白金高輪駅付近の既設の留置線の活用を踏まえつつ、道路下公共用地を通過することを基本として計画されており、上図のように目黒通り下を通るルートが選定されました。(白金高輪駅付近にある既設の留置線の活用と、南北線の鉄道を運行しながらの工事となることも踏まえると、最短ルートとなる国道1号下のルートを通ることは難しかったようです)

図:東京都・東京メトロ 南北線の分岐線の都市計画案の資料より

上の断面図を見ると、新たに品川駅を地下に設置し、品川駅から白金高輪駅付近の既設の折り返し施設までトンネルを構築するという計画になっています。品川駅と白金高輪駅付近の既設の折り返し施設に接続する上図のピンク色の箇所が「開削工法」の部分で、灰色で示した駅間の部分は「シールド工法」が予定されています。

東京メトロ品川新駅は島式ホームの予定

図:東京都・東京メトロ 南北線の分岐線の説明資料より

公告となった品川工区にあたる東京メトロ南北線の品川駅部の標準的な横断面図については、上図のようにホームを1面として、その両側に線路を配置するという計画になっています。駅部分は開削工法を採用するため、四角い箱型のトンネルとなり、幅は約19m~22mとなる予定です。

地下鉄の建設工法について

図:東京都・東京メトロ 南北線の分岐線の説明資料より

今回の南北線分岐線区間の両端部分に採用される「開削工法」は、最初に地下を掘り下げる時に周りの土を押さえる土留め杭を地中に設置し、地上から掘削を進めて地下に箱型のトンネルを築造するという工法です。両端の間になる部分は「シールド工法」の採用が予定されていますが、これは開削工法で築造した箱型トンネルから、シールドマシンを用いて地下を横方向に掘り進むという工法になります。シールドマシンの前面で土を掘削し、マシンの内部でトンネルを構成する部材となるセグメントを円形に組み立てていきます。これらの作業を繰り返しながら、トンネルを築造していきます。今回は、直径が約10mで、複線(AB線)分の2車両分が通れる円形トンネルが予定されています。

環状4号線の下を通る区間に関して

現在、JR品川~高輪ゲートウェイ駅間を通り、東京メトロ高輪台駅付近、白銀高輪駅付近を結ぶ形で、自動車・歩行者のための環状4号線の道路工事事業が、2032年度の完成を目指し実施中となっています。

図:東京都・東京メトロ 南北線の分岐線の説明資料より

東京メトロ南北線の分岐線は、国道15号や目黒通り、現在、事業実施中の環状第4号線の道路空間を最大限活用する形で工事が進まれ、東京メトロ南北線の分岐線と環状第4号線が重複する 範囲については、地下鉄南北線の分岐線計画では用地取得を行うことは無いとしています。

南北線の品川駅が出来たらどうなる

この延伸・分岐線区間が開通すると、以下のようにアクセス利便性の向上が見込まれます。

・六本木・赤坂等の都心部とリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅とのアクセス
・羽田空港、品川開発(国際競争力強化の拠点)とのアクセス
・所要時間の短縮
(品川駅-六本木一丁目駅間)の所要時間は、現状約19分 → 約9分(約10分の短縮予定)

現在、品川駅には地下鉄の駅が無く、不便を感じている人も多いと思いますので、この開業を心待ちにしていることでしょう。

先日、JR東海のリニア中央新幹線の開業が、「2027年」から「2027年以降」に変更になるということが発表されています。京急では、京急品川駅の地平化を国道15号・品川駅駅前広場と同時期の「2027年度中」、連続立体交差事業を含めた全体の完成は「2029年度末」と見込んでいます。今回の東京メトロ品川駅の開業時期に関しては「2030年代半ば」ということですので、今後も品川駅周辺の様々な開発計画・工事の状況を含めて、推移を見守っていきましょう。

( 鎌田啓吾 鉄道チャンネル )

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