横浜の街を象徴する巨大ターミナルである横浜駅の西口周辺は、実は相鉄グループが中心に開発をしてきた街だと知っていましたか?そんな街が、100年に一度の大きな転換点を迎えています。
相鉄グループが2024年9月に発表した「横浜駅西口大改造構想」は、2040年代の実現を目指す、街全体の機能や景観、人の流れを根本から見直す壮大なプロジェクトです。戦後間もない1952年からこの地の発展を主導してきた相鉄グループが描く新たなコンセプト「Well-Crossing」とは何か? なぜ今、慣れ親しんだ「相鉄ムービル」を閉館させて「大改造」に踏み切るのか。70年にわたる挑戦の軌跡と、国際都市の玄関口として劇的に進化する未来の姿を、相鉄の発表資料を基に詳しく紐解きます。

相鉄グループとともに歩んだ横浜駅西口、70年の歴史

横浜駅には多くの鉄道路線が乗り入れますが、西口周辺の開発は、JRでも東急でもなく、神奈川県の私鉄である相鉄が主役で進めてきたといえます。その歴史は、そのまま相鉄グループの発展の歴史でもあります。
終戦後の1952年(昭和27年)、相鉄が西口の土地を取得したことから本格的な開発が始まりました。

まだあまり建物も無い、1952年当時の横浜駅西口(画像:相鉄グループ)

1950年代には「横浜駅西口総合繁華街構想」を策定 。高島屋ストアや横浜駅名品街、食堂などが次々と誕生し、泥炭地だった駅前が日本有数の繁華街へと急成長を遂げました。

1956年当時の横浜駅西口、横浜高島屋の前身である高島屋ストアが見えます(画像:相鉄グループ)

その後、相鉄ジョイナスや横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズなど、時代に合わせた都市機能の強化が進められました。しかし、開発開始から70年以上が経過し、施設の老朽化や都市間競争の激化といった新たな課題に直面しています。

「横浜駅西口大改造構想」とは

相鉄グループの相鉄ホールディングス・相鉄アーバンクリエイツは2024年9月に「横浜駅西口大改造構想」を発表しました。新たな構想の核となるのは、「Well-being(豊かさ)」「Crossing(交差)」を掛け合わせた造語「Well-Crossing」です。

「Well-Crossing」での創造!

横浜駅西口の開発コンセプト

この構想では、多様な人々、企業、情報が集まり交流することで、日常的に幸福感を感じられる「人にひらかれたまち」を目指します。

将来の横浜駅西口イメージ

3つの重点テーマで目指す、8つの街の姿

コンテンツ・サービス導入、新産業の集積、多様な人々でのコミュ二ティー形成という3つの重点テーマを定めています。

横浜西口の将来像

それにより、持続可能な「カーボンニュートラルな街」、住み続けやすい「先端技術を活用した街」、ゆとりある「公共空間が開放された街」など、8つの街の姿を目標として掲げています

横浜駅西口「大改造」の内容は?

現在でも、横浜駅西口周辺には相鉄グループの保有する物件が多数存在します。それらを段階的に更新、保有資産を順次建て替えながら、国際競争力を持つ機能や性能を備えた空間へと刷新していく計画になっています。

横浜駅周辺の相鉄所有物件MAP。 ジョイナスや高島屋、シェラトンホテル、ビブレ、ムービル、駅前に広がる地下街なども含まれているのがわかります(図:相鉄)

構想では、公共空間の再編を進めるため、横浜市と官民の連携を行っていきます。
にぎわいに加えて、歩きやすさ、過ごしやすさ、人が集い交流できる環境づくりを重視し、人中心の駅前広場の創出や、水辺空間を活用した歩きたくなる歩行者ネットワーク、歩行者優先のまちづくりなどを進める方針です。単に老朽化した施設を建て替えるだけではなく、横浜駅西口全体の機能や景観、人の流れを見直していくことになります。

官民連携してのハード整備取り組みのイメージ

また、近隣のみなとみらい21地区や関内・関外地区など、周辺エリアとの連携を強化し、横浜都心の玄関口としてのプレゼンスを高め、産官学が一体となった共創型のまちづくりを地域とともに進めるとしています。

将来の横浜駅西口では、新技術を取り入れた体験施設などで新たな体験に出会ったり、 広場やアトリエなどでイベント運営や創作活動のお披露目にチャレンジができたりという未来像が示されています。

横浜駅周辺での将来の日常シーンの想定

日常シーンとしては、「水辺のマーケットで過ごす」「職住近接のヨコハマライフ」「まちの刺激を受けながら仕事する」といった日常生活の場面が想定されています。

近年の相鉄線からの直通ネットワーク開通の影響は?

相模鉄道では、鉄道ネットワークの拡大も進み、2019年11月には相鉄・JR直通線、2023年3月には相鉄・東急直通線が開業しました。

相鉄線の電車 (画像:相鉄)

沿線からの新横浜や東京都心方面へのアクセス・速達性は向上し、相鉄線の横浜駅周辺の混雑緩和には寄与しましたが、以前に横浜で乗り換えをしていた都心への通勤客の多くが横浜を経由せずに直接都心へ移動するという人流の変化が起きました。
とはいえ、横浜駅には相鉄線の他にもJR・京急・東急・横浜高速鉄道・横浜市営地下鉄という6社が乗り入れており、1日の乗降客が約200万人(2024年度)にも達する、日本でも屈指の大規模ターミナルであることには変わりありません。
相鉄グループが横浜駅西口の大規模な再開発を行う背景には、横浜駅周辺の魅力をさらに高めることで、沿線からの利用を増やしたり、横浜駅周辺を人が集う目的地にしたいとの思惑があります。

開発のロードマップ・スケジュール感

2026年9月30日で、映画館や音楽ライブホール、飲食店などが入る複合娯楽施設である「相鉄ムービル」の閉館が決定しました。また、隣接する「1000クラブ」と「横浜西口一番街」も同じ9月30日に営業を終了する予定です。

【参考記事】さらば相鉄ムービル、親しまれた37年の歴史に幕を閉じ「横浜駅西口2040年への大改造」が本格始動!隣接2施設も同時終了へ【9/30閉館】 https://tetsudo-ch.com/13025085.html

現在の「相鉄ムービル」の建物 (画像:相鉄)

横浜駅西口のにぎわいを支えてきたこれらの施設が閉館することで、いよいよ「横浜駅西口大改造構想」が動き出すことになります。現段階では、具体的な開発の計画は見えていませんが、車に占められている駅前空間の再整備を盛り込むなど、人にやさしい街づくりが進むものと考えられます。

このプロジェクトは、2040年代の実現を目指し、段階的に進められます。

横浜駅西口大改造構想のロードマップ

横浜駅周辺では、相鉄による西口再開発に加えて、横浜市による西口駅前広場の改修整備も進んでいますので、官民で協力をしながら進めていくこととなります。

横浜駅西口のJR東日本の旧駅ビル跡地には、26階建ての「JR横浜タワー」が2020年3月に竣工。オフィスや商業施設「CIAL横浜」「NEWoMan横浜」、映画館「T・ジョイ横浜」などが入居しています。

JR横浜タワーと横浜駅西口の駅前(写真:PIXTA)

少し北となる横浜駅きた西口鶴屋地区鶴屋町一丁目には、相鉄グループと東急などが開発をした、地上43階建ての「THE YOKOHAMA FRONT(ザ ヨコハマ フロント)」が2024年3月末に竣工。超高層マンションが主体の建物ですが、ホテル・サービスアパートメントの「相鉄ホテルズ ザ・スプラジール 横浜」や、多くの医療機関が入るクリニックモールや飲食店街なども入居しています。

さらに横浜駅東口側でも、日本郵政やJR東日本、京急電鉄などが関わり東口駅前広場の再編や歩行者デッキ整備する「ステーションオアシス」計画や、横浜中央郵便局等を建て直す「横浜駅みなみ東口地区市街地再開発」などが進んでいます。

1952年に始まった相鉄の挑戦は、2026年9月30日のムービル閉館により、新たな章に入ります。しかしそれは、水辺のマーケットや24時間楽しめるエンターテインメントなど、私たちが想像もしなかったワクワクする横浜の未来へのカウントダウンともいえるでしょう。
産官学、そして市民が一体となって共創する「Well-Crossing」な街。2040年に向けて新しく生まれ変わる横浜駅西口の進捗を、これからも見守っていきましょう。
(写真・画像:相鉄グループ、PIXTA)

鉄道チャンネル編集部、 鎌田啓吾

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