
首都圏の国際ハブ空港として発着容量「年50万回」を目指す成田空港の機能強化計画。3本目の滑走路として整備が進む「C滑走路」の完成予定が、当初の2029年3月末から5年以上延期され2034年12月31日に改められました。
成田国際空港(NAA)が2026年10月19日に国土交通大臣に届け出たもので、難航する用地取得に対して任意交渉を継続しつつ、異例ともいえる「土地収用制度」の活用に踏み切る方針も示されています。滑走路の新設延期は単なる工事の遅れにとどまらず、将来期待されていた「新規LCC路線の拡充」や「深夜早朝便の拡大」「国際線ネットワークの増便」といった旅行者・ビジネス客への利便性向上スケジュールが2030年代前半へと後ろ倒しになることを意味します。
この記事では、今回申請された新貨物地区・大型誘導路の整備規模から、約9割で足踏みする用地買収の現状、そしてB滑走路延伸を含む“第2の開港”の最新ロードマップまで合わせてご紹介します。
完成予定は2034年12月31日、誘導路7,044mと駐機場約82万㎡も申請
NAAが2026年10月19日に行った手続きは2つあります。
1つは、C滑走路などの工事について、新しい完成予定期日を国土交通大臣に届け出たことです。C滑走路と誘導路、駐機場の完成予定期日は2034年12月31日としました。

もう1つは、C滑走路の北側に設ける「新貨物地区」に必要な誘導路と駐機場(エプロン)を整備するため、航空法第43条に基づく空港の変更許可を申請したことです。誘導路は新たに7,044m、駐機場は823,664㎡を新設します。駐機場の面積は東京ドーム約18個分にあたります。
用地の確保は約9割、残りの取得には土地収用制度も
C滑走路の整備が遅れているのは、必要な用地をすべて確保できていないためです。
NAAは今回の発表で、C滑走路や新貨物地区について、任意での用地取得の実現に向けて最大限努力すると同時に、土地収用制度を活用するとしました。土地収用は、公共事業に必要な土地を、補償を前提に法律の手続きで取得する制度です。
2026年4月の報道によると、3月末時点で計画に必要な用地のうちC滑走路の区域は88.7%を確保していたものの、残る土地は補償額などで交渉が難航していました。この時NAAは国土交通省に対し、C滑走路の供用時期が見通せなくなったと伝えていました。今回の届け出により、新しい完成予定期日が初めて示された形です。
B滑走路の延伸とC滑走路の新設で、発着は年50万回へ
C滑走路は、NAAが「成田空港第2の開港プロジェクト」と呼ぶ機能強化の柱です。
いまあるB滑走路の南側に長さ3,500mの滑走路を新設し、あわせてB滑走路を2,500mから3,500mに延ばします。完成すると、A滑走路(4,000m)と合わせて3本の長い滑走路を持つ空港になり、年間の発着容量は50万回に広がる計画です。

NAAは、このプロジェクトを日本の国際競争力の強化やインバウンドの受け入れ、国際物流網づくりのために重要な事業と位置づけています。新貨物地区の整備や、空港と周辺地域がともに発展する「エアポートシティ構想」も、C滑走路と一体で進めています。
一方、B滑走路の延伸部分は用地をほぼ確保済みで、2026年4月の報道では、C滑走路より先に2029年度内の供用をめざすとされていました。今回のNAAの発表では、B滑走路の延伸については触れていません。
「C滑走路などの完成予定期日の届け出と変更許可申請(2026年10月19日)」
C滑走路・誘導路・駐機場の完成予定期日:2034年(令和16年)12月31日
誘導路の新設延長:7,044m
駐機場(エプロン)の新設面積:823,664㎡
供用開始の目標:2030年代前半
C滑走路の計画:B滑走路の南側に長さ3,500mで新設(B滑走路は2,500mから3,500mへ延伸)
発着容量:完成後は年間50万回
事業者:成田国際空港株式会社(NAA)
旅客ターミナルを巨大“ワンターミナル”へ集約、空港への鉄道アクセスも改善へ
現在の成田空港は第1~第3の3つの旅客ターミナルで構成されてますが、段階的に構造を変更して世界最大級の巨大「ワンターミナル」へと集約されるという計画も発表されています。
滑走路の新増設により成田空港の発着回数が50万回に達した場合には、2025年度で約4,153万人だった年間の旅客数が年間7,500万人に急増するという見通しがある事や、3ターミナルに分かれていることで生じる乗り継ぎ(トランジット)の不便さを解消するための新ターミナル計画です。

また、現在3つあるターミナルを一つにすることで、空港運営と航空会社の効率化(コスト削減)にもつながるとされています。

更に、鉄道での「空港アクセス」を改善する動きもにも注目が集まります。2026年7月に国土交通省などの検討会が「2030年代の全体完成に向けた最終とりまとめ(計画案)」を公表したことで、成田空港の鉄道アクセスに関しては、本格的な事業化検討・着手に移行する段階にあります。
これまで最大の弱点だったJRと京成の空港手前の単線区間(ボトルネック)を一掃して、駅を再整備することにより、輸送力を現行の約1.8倍に引き上げるという計画になっています。

JR東日本は線路の改軌と複線化を行うことで、成田空港駅のホーム増設や機能強化を行います。
京成は、現在の東成田駅付近に3面5線の高架新駅を整備する計画で、さらに成田空港から都心・羽田空港方面を直通させる新型有料特急の導入に関しても計画が進行しています、

新ターミナルや鉄道の整備に関しては、構想では2030年代前半に現在の第1と第2ターミナルの中間あたりに新しいターミナル(の半分)と新駅を開業させる予定としています。今回、新滑走路整備の時期が後ろにずれたことで、この辺りのスケジュールが見直されるのかにも注目です。
2018年に合意した“第2の開港”、目標は2029年3月末だった
成田空港の滑走路の増設と延伸は、2018年に国、千葉県、空港周辺の市町、NAAの4者で合意した計画です。
当初は2029年3月末までの完成をめざしていましたが、用地の取得が進まず、今回あらためて2034年末という完成予定が示されました。
成田は、1978年の開港前後から、用地の取得をめぐって長い時間がかかってきた空港でもあります。工事そのものに加えて、残る土地の取得がこの先どう進むかが、新しい完成予定を守れるかどうかの鍵になりそうです。
都心から京成スカイライナーやJRの成田エクスプレスで向かう空の玄関口が、滑走路3本の空港に生まれ変わるのは2030年代になりそうです。次に成田から旅立つときは、B滑走路の南側に広がる工事の様子を、離着陸の窓からのぞいてみてはいかがでしょうか。
(画像:成田国際空港NAA、国土交通省)
鉄道チャンネル編集部
(旅とおでかけ!鉄道チャンネル)