運転席に人が座ることなく、車外から自動運転車を遠隔操作するシーンはいま、どんなフェーズにいるか―――。

そのリアルな光景が、豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)で行われた実証実験でみえてきた。

愛知県、アイサンテクノロジー、KDDI、損害保険ジャパン日本興亜、ティアフォー、名古屋大学は11月14~21日、のんほいパークで遠隔型自動運転の実証実験を実施。

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遠隔監視・操作できる自動運転車両を、複数台同時に走らせる実証実験は、全国初。

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運転席無人の自動運転車を遠隔で監視・操作

今回の実証実験では、自動運転車のトヨタ「エスティマ」(最大乗員4名)と、ゴルフカートベースの「マイリー」(同4名)を用意。

両車とも運転席は無人。運転席は、遠隔監視・操作の拠点スペースに設置。

実験では、エスティマとマイリーから離れた場所にある運転席から、両方のクルマを同時に遠隔監視・遠隔操作した。

車両は遠隔監視されているとき、ハンドル、アクセル、ブレーキが自動的に制御され、出発地から目的地まで自動運転で走る。

途中で衝突などの危険を察知した場合は、遠隔操作者らが緊急停止などの対策をすみやかに的確に行っていく。

マイリーは埼玉工業大学発ベンチャー「フィールドオート」などがサポート

この実証実験に使われた自動運転車、エスティマとマイリーは、事前に作成した高精度3Dマップをもとに、LiDARで周囲を検知しながら決められたルートを走る。

ヤマハ発動機のゴルフカートがベースのマイリーは、車内は客席のみ。運転席や操舵装置を装備していないのが特長。

現時点で公道走行はできないが、ラストマイルの移動ニーズに対応している。

マイリーは、名古屋大学発の自動運転開発ベンチャー「ティアフォー」や、埼玉工業大学発の自動運転開発ベンチャー「フィールドオート」などが担当。

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埼玉工業大学のフィールドオートは今回、この豊橋市の自動運転実証実験で、自動運転車のオペレーションをサポート。

今回の実証実験は、愛知県がアイサンテクノロジーへ委託する自動運転実証推進事業で、KDDI、 損害保険ジャパン日本興亜、ティアフォー、名古屋大学などと協力して行われている。

交通量の多い都内で自動運転レベル3にもトライ

ティアフォーが100%出資するフィールドオートは現在、ティアフォー製自動運転ソフトウェア「Autoware」(オートウェア)などを活用した実証実験などを広くサポート。

埼玉工業大学は、フィールドオートに対して実証実験用機材や人材を提供。フィールドオートは、民間企業や自治体などから実証実験を受託し、実験をサポートしている。

また、フィールドオートはことし9月、都内で実施した自動運転実証実験にも参画。交通量の多い青梅街道でレベル3の自動走行を実施した。

同実験では、損害保険ジャパン日本興亜が都内拠点に遠隔型自動運転サポートセンターを設置。同社本社ビルからプライムアシスタンス本社まで(約1.5km)、レベル3自動走行にトライした。

<埼玉工業大学 公式HP>

フィールドオートは、今回の愛知での遠隔監視自動運転実証実験を活かし、自動運転技術の開発をさらにすすめていく構え。

また、埼玉工業大学では来春、AI専攻コースもスタートする。

フィールドオートの代表取締役で埼玉工業大学の渡部大志教授は、今回のAI専攻コースで、今後のAI人材需要に応える人材育成にも力を入れ、日本ディープラーニング協会が定める資格取得なども支援していく。