好きな人の鉄道旅をたどって。
好きな人の好きなものは、誰だって気になりますよね。
そんなわけで(!)、鉄道がどんどん好きになっていく彼女のお話。
『夢より短い旅の果て』(柴田よしき著)は、大学進学後ある目的から鉄道旅にはまっていく女の子の物語です。
自らも鉄道ファンである著者の描く、丁寧な鉄道風景がこの鉄道恋物語を彩ります。
例えば、ドアが開いた瞬間、トンネルが終わった途端、急勾配を登り切った先でいきなり飛び込んでくるあの景色のこと。
*写真: 飯田線、中部天竜駅
事前にネットやガイドブックでどんなにその絶景を予習していても、胸を突かれるあの瞬間が
この物語の中にも何度も出てきます。
例えば、偶然同じ車両に乗り合わせたり、そのなかでも特に最後まで行き先が一緒だったりすると
なんとなく芽生える仲間意識のようなもの。
*写真: JR日光線、 日光駅
運転士、社員さん、地元の人に、観光客……それぞれ目的は違えど、一時一所を共有する不思議な縁も
鉄道旅の魅力のひとつです。
まだ鉄分のそれほど濃くない主人公が、乗って旅して体験する出来事を
ひとつひとつ読んで追いかけて行くと
鉄道の取材を始めてあちこち乗るようになったここ数年の様々な思い出が重なって、
何度も手をとめて自分の取材ノートを見返しました。
*写真: 高岡駅
私は通過しちゃったあの駅って、こんな感じなのかな、
彼女もあの海岸線を見てドキドキしたのかしら、なんて
ページをめくりながらついつい勝手に相乗りしてしまう自分がいるのでした。
<鉄道旅ミステリ>と銘うたれたこちらの本は第一弾で、
続編の第二弾『愛より優しい旅の空』(柴田よしき著)も発売中です。
彼女が追いかける鉄道恋路の行方やいかに…。
*写真: JR常磐線、いわき駅