青函トンネル、実は3本!?

1986年の青函トンネルレール締結式では、本州から北海道へとつながったレールをモーターカーが通りぞめしました(画像は鉄道建設・運輸施設整備支援機構の記録映画「青函トンネル」から)

青函トンネルは1本というのは当たり前ですが、実は列車の走る本坑に並行して、作業坑、本坑下部には先進導坑が本州と北海道を結びます。

3本のトンネルのうち、先進導坑は公団が直接施工しました。直轄施工では公団が自ら資材を調達し、設計や施工、現場での監督業務も公団職員が担当しました。公団は先進導坑の直轄施工で、新規技術を開発・確認、地質も見極めて本坑建設の自信を得ました。

大きな異常出水は全部で4回

大きな異常出水は全部で4回ありました。最初は1969年2月で、復旧までに137日間を要しています。しかし、最初の出水を克服したことが、その後のトンネル掘削の自信になった効果も見逃せません。

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次いで、1976年5月に吉岡作業坑で発生した出水は毎分の湧水量が85トンに上り、青函トンネル建設上、最大の異常出水事故になりました。最終的な出水量は約216万トン。作業坑3015メートルと本坑1381メートルが水没しました。

こうした異常出水を含め、青函トンネル建設は注入工法で止水して地盤を強化、掘削を再開することの繰り返し。工事全体のうち止水の時間が6割、実際の掘削は4割で、注入には掘削を上回る時間を要しました。注入材料は海水に強く、耐久性を求められます。基本はセメント水ガラスを使用しました。

ユーロトンネル建設の機運高める

最後に、青函トンネル建設の意義。まずは、海底長大トンネルを可能にした技術開発、そして何より日本の高度なトンネル鉄道建設技術を、世界に示した点も見逃せません。

世界をみれば、海底トンネルが脚光を浴びたのが、1994年5月に開通した英仏海峡トンネル(ユーロトンネル)。土木の世界では、「ユーロトンネル建設の機運を盛り上げたのは、実は日本の青函トンネルだった」というのが定説になっているそうです。

北海道新幹線で本州から北海道に渡れば、青函トンネルの通過時間はおよそ25分。車窓は真っ暗なわけですが、「JRTT鉄道・運輸機構チャンネル」をご覧いただいた上で、次回の乗車時は公団技術陣の〝鉄道魂〟に思いをはせてみてはいかがでしょうか。