「2024年問題」でビジネスチャンス(JR貨物)

続いては順不同でJR貨物。事業計画では、「鉄道事業部門の収支改善」を目標に掲げます。犬飼新・社長は2023年4月3日の社員向け訓示で、「コロナ禍の影響で、ここ数年で鉄道貨物輸送量は2割減った。何としても利用を増やすため、社員全員が必死になる気持ちが必要だ。私も先頭に立っていく(大意)」と決意を述べました。

物流業界をみれば、働き方改革関連法(通称)が施行される2024年4月を機に、深刻なトラックドライバー不足が予想されます。「貨物(荷物)があっても運べない」が「2024年問題」。大量の貨物を定時に運べる、JR貨物への社会的期待が高まります。

追い風の中、JR貨物がターゲットとするのが、例えば東京ー大阪間、大阪ー福岡間といった輸送距離500キロ前後の中距離帯です。具体的戦略では、市場調査データを分析して機関車や貨車を適正に配置。ソフト面では柔軟に運賃設定して、コンテナ列車の貨物積載率を向上させます。

2024年問題などを見据え、トラックから鉄道へのモーダルシフトを促すため、物流事業者にコンテナ積み替え施設の利用をうながします(資料:JR貨物)

EH500形を日本海縦貫線対応に、貨物新幹線の車両も検討

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2023年度設備投資計画に示された、鉄道分野の投資予定額(維持・更新)は149億円。車両関係では、EF210ー300形とEF510-300形2形式の電気機関車(EL)を増備します。

さらに、仙台総合鉄道部に所属するELのEH500形48両を日本海縦貫線対応に改造する工事を引き続き実施(一部施工済み)。北海道・東北―関西方面の貨物列車は通常、東北・東海道線など太平洋ラインを走行しますが、万一の自然災害時に代替ルートの羽越・北陸線などを経由することで輸送ルートを確保します。

日本海縦貫線走行対応に改造するEH500形。JR貨物が1997年から導入する2車体連結・主電動機軸8軸の強力機でニックネーム「金太郎」(写真:やえざくら / PIXTA)

もう一点、事業計画で目に止まったのが、「長期経営計画『JR貨物グループ長期ビジョン』に掲げた施策への対応」。新技術・スマート貨物ターミナルの実効策として、「物流イノベーションに向けた貨物新幹線車両などの検討」を打ち出しました。