JR西日本の特急「まほろば」と観光列車「はなあかり」が、2025年度グッドデザイン賞に選ばれました。既存の車両をリユースしつつ、地域と専門家を巻き込んだ「共創型デザインプロセス」により、車両を通じて奈良の歴史や文化を世界に発信するプロジェクトとして高く評価され、車両の内外装に地域の魅力を取り入れた点もポイントです。同社は「心を動かす、未来を動かすサービスを提供していきたい」とコメントしています。

特急「まほろば」、奈良の物語を乗せる車両

特急「まほろば」は大阪と奈良を結ぶ列車で、臨時運行から定期運行にあわせて専用車両としてリニューアルされました。現地調査や専門家の意見を取り入れた共創型デザインにより、「安寧」と「悠久」の2編成を設定。既存車両を活用しつつ、ロゴや外装色、動植物モチーフ、車内放送など細部まで奈良の魅力を表現したとされています。

大阪~奈良間を結ぶ「安寧」は金色と蘇芳(すおう)色がゆるやかに溶け合うグラデーションが印象的で、あたたかみのある落ち着いた車内に仕上げたということです。
「悠久」は墨から灰渋色へと移ろう深い色合いで、時の流れや歴史の重なりを感じさせるデザイン。編成内には小さな展示スペースも設けられ、沿線の文化を紹介する場として活用される予定です。「安寧」は4月5日、「悠久」は10月18日運行開始予定です。

(参考)JR西日本 特急「まほろば」第2編成「悠久」が10/18いよいよデビュー!大阪駅で出発式を開催
https://tetsudo-ch.com/13012058.html

特急まほろばの2つの編成、上写真右「安寧」・左「悠久」 イメージ

観光列車「はなあかり」、「もはや鉄道ではない」の評価

観光列車「はなあかり」は、西日本各地を走る新しいスタイルの列車として設計されました。「地域の華を列車に集め、お客様と地域の縁を結ぶ」をテーマに、華やかで落ち着いた和の色彩と柔らかな照明で、移動時間そのものを楽しめる空間としています。外装は西日本の自然や風景になじむ懐かしくもモダンなデザインで、ロゴには「地域に光を灯す」という意味を込めたということです。車内には沿線の工芸品やアート作品が並び、特産品販売やイベントにも使えるフリースペースを備えています。

観光列車「はなあかり」

審査員の評価!

審査委員は「まほろば」について、既存車両を生かしながら奈良の魅力を表現し、強い物語性で新しい価値を生んだ点を評価。
「はなあかり」は、もはや鉄道ではないとした上で、高級感のある内装や照明で移動を体験に変え、工芸展示を通じて沿線文化を発信する動くミュージアムとしての新しい鉄道像を示したと評価しました。

JR西日本の特急「まほろば」と観光列車「はなあかり」は、既存車両の可能性を最大限に引き出し、地域と乗客の双方に新しい価値を生み出した点がグッドデザイン賞で高く評価されました。デザインの力で「鉄道という移動手段」を超え、「心を動かす、未来を動かすサービス」へと進化を続けるJR西日本の取り組みに、今後も注目が集まります。
なお、グッドデザイン賞の鉄道関連には他にも、東武鉄道80000系、西武鉄道の「サステナ車両」8000系、近鉄8A系などが選ばれました。また、近鉄の昇降ロープ式ホーム柵や三菱電機のホームドア、JR東海とナビタイムの新幹線時刻表アプリなども受賞しています。
(画像:JR西日本)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

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