埼玉エリアと千葉・湾岸エリアの移動が劇的に変わるかもしれません。JR東日本と西武鉄道が、武蔵野線と西武池袋線の直通運転を、2028年度の実現をめざし検討していることが、JR東日本の四半期決算説明資料から明らかになりました。鍵となるのは、現在貨物列車などが使用している「新秋津駅~所沢駅」間の連絡線です。ここを旅客化することで、これまで秋津駅の商店街を歩いて乗り換えていた手間が解消され、秩父やベルーナドーム、東京ディズニーリゾート(舞浜)、幕張メッセといった人気スポットへ、乗り換えなしでアクセスできる未来が近づいています。

西武線沿線からJR京葉線方面とも接続が可能に

武蔵野線は、東京都・埼玉県・千葉県を半環状に結ぶJR東日本の路線で、都心部の貨物輸送を迂回させる目的で1960年代に建設が進められ、1973年4月に府中本町~新松戸間が開業、1978年に西船橋まで延伸して全通しました。現在は通勤・通学路線として定着し、京葉線との直通運転も行っています。(西船橋からは、舞浜・東京駅方面へも、南船橋・海浜幕張方面へも、両方面への直通運転を行っています。)
武蔵野線では現在、大宮方面へ直通する「しもうさ号」も運行されています。JR以外の私鉄・西武池袋線との相互直通というのは、初めての試みとなります。

JR東日本 2026年3月以第2四半期決算説明資料より

西武池袋線は、池袋駅(東京・豊島区)から吾野駅(埼玉・飯能市)までを結ぶ西武鉄道の主力路線で、前身は1915年に開業した武蔵野鉄道の池袋~飯能間です。戦後の1945年に西武鉄道と武蔵野鉄道が合併して現在の形となり、沿線の宅地開発とともに通勤輸送の大動脈として発展しました。飯能から先は西武秩父線として、埼玉県の秩父・長瀞地域の観光拠点である西武秩父駅までを結んでいます。

西武球場前駅

JR武蔵野線と西武線を結ぶ連絡線を活用

今回の、相互直通運転に関しては、車両搬入のために使われている連絡線を利用するという計画で、西武鉄道からも6月に公表されていたものです。
JR武蔵野線新秋津駅と西武所沢駅の間には、貨物列車や車両の搬入・搬出に使われてきた単線の連絡線があり、このうち約1.6キロをJR東日本が、残りを西武が保有しています。通常は旅客列車は走らず、西武線の車両回送などに使用されてきました。

秋津駅

現在の乗り換え拠点となる、西武池袋線の秋津駅とJR武蔵野線の新秋津駅の間は、商店街を抜ける約400メートルの道のりで徒歩で6~7分かかります。この直通運転が実現すると、駅で乗り換えすること無く、西武線とJR武蔵野線間を走る列車が実現されます。臨時列車での運行になるということですので、繁忙期・多客期の観光用としての直通運転になると考えられます。

西武沿線からディズニーリゾートへ、東京駅・蘇我駅から秩父方面へ

直通ルートが実現すれば、それぞれの沿線施設へのアクセス向上も期待されます。
例えば、西武線の飯能駅や所沢駅を出発して、JR武蔵野線・京葉線へ乗り入れ、舞浜駅の「東京ディズニーリゾート」へ行く列車や、「幕張メッセ」や千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」とも結ばれることになります。
また、東京駅や蘇我駅・千葉みなと駅など京葉線沿線を出発して、西武沿線のプロ野球・西武ライオンズの本拠地「ベルーナドーム」や「西武園ゆうえんち」、「秩父」などの観光・レジャー施設に向かうための臨時列車の運行が想定されます。

ZOZOマリンスタジアム

課題だった「秋津の乗り換え」が解消され、埼玉と千葉のレジャー拠点が一本のレールで結ばれるこの構想。実現すれば、野球観戦やライブ、テーマパークへの移動が快適になり、それぞれの地域からのお出かけエリアが広がる可能性を秘めています。2028年度の実現に向け、具体的なダイヤや運行車両などの詳細発表が待たれます。
(画像:PIXTA、JR東日本)

鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)

【関連リンク】