「GSのサービス基地化に弾みが付く」

千葉新港SSは元々、無人のセルフスタイルで、給油客は無人決済システムにも抵抗を感じないようです。MCEや太陽鉱油はTTGとの協業を、「目標とするGSのサービス基地化に弾みが付く。店舗の省力化が可能になり、人材不足の解消にもつながる。新型コロナウイルス感染症対策としても有効」と歓迎。鉄道駅とGS、ジャンルは違ってサービス基地化を目指す基本は共通だったわけです。

開設時のハード面では、事前に組み立てた店舗をGS内に直接搬入。現地での工事が不要になって、短時間でのオープンが可能になります。

新規事業セミナーが協業のきっかけ

本来はライバルともみられがちな、鉄道とGSが協業に至ったのは少々ユニークな背景があります。新規ビジネスのセミナーで、TTGのビジネスコンセプトが披露され、それにMCEが興味を持ったのがきっかけ。JR東日本と三菱商事、どちらも日本を代表する大企業ですが、小さな人のつながりが新しいビジネスチャンスを生み出しました。

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GS業界では、もちろん有人のコンビニを併設するスタンドもありますが、大都市や幹線道路沿いでないと経営的に成り立たせるのは難しい。しかし人件費ゼロの無人店舗なら、地方都市でも開設可能です。MCEの担当者も「従来は自動販売機しか置けなかった極小スペースでも、物販が可能になる」と話していました。

TTG-SENSE MICROのスペック。棚数やアイテム数は店舗スペースに応じて柔軟に対応できます(画像:三菱商事エネルギー)

日商目標は3~10万円

ビジネスモデルとしては、TTGがGSのスペースを借りてテナントとして出店。千葉新港SSにはシャワールームがあるため、鉄道駅に比べ洗面具などの日用品を豊富にそろえました。今後の店舗展開では、観光地のGSでは土産品を販売。GSの無人店舗は日商3~10万円の売り上げを期待します。

TTGは今後、オフィス、病院、工場などへの事業展開を構想しますが、「JR東日本発のビジネス」として交通を得意分野にしたい考え。駅や今回のGSのほか、空の交通では羽田空港に出店済み。引き続き、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアへの事業展開を目指します。

千葉新港SSの無人店舗オープンを前にした2021年9月28日の報道公開には、協業3社からTTGの阿久津智紀代表取締役社長、MCEの近藤健一郎経営企画部長、太陽鉱油の諏訪原高博経営企画担当部長が出席、それぞれ無人店舗成功やGSのサービス基地化に向けた決意を語ってくれました。

記事:上里夏生