どうなる地方ローカル線 国の検討会が初会合 JR2社は沿線自治体との話し合いの場を求める(前編)【コラム】
現状のまま鉄道を維持するのは非常に困難(JR西日本)
地方ローカル線に対するJR西日本の基本認識は、「輸送密度が1日あたり2000人未満の線区は、このままの形で(鉄道を)維持するのは非常に難しい」です。簡単にいえば、「利用客の少ない線区は存続できない」という〝SOS〟なのですが、詳細は国交省の考え方もあわせて後編にまわします。
JR西日本の資料に、2018年に廃止された島根・広島県の三江線の経過報告があったのに注目しました。三江線の輸送密度は2015年度データで1日58人。
おまけに2006年と2013年の豪雨災害では、全線で一定期間運転を見合わせ。JR西日本は、「被災と復旧の繰り返しでは、社会経済的合理性が得られない」として、沿線の同意を得て、2018年4月に鉄道を廃止しました。
ただ、JR西日本は地域の移動を放棄したわけではなく、地方版MaaSを三江線沿線の島根県邑南町で実践。マイカーを運転しない高齢者が、病院に通院したり買い物に出かけられる仕組みをつくりました。
自治体との対話に入るための明確な基準を
JR西日本の「検討会で議論してほしいこと」は、JR東日本とほぼ同じ中身ですが、「自治体の対話が円滑に開始できるよう、例えば『輸送密度1日2000人未満の線区』など、一定の明確な基準を設ける仕組みをご検討いただきたい」とします。本コラム前半で紹介した、長谷川社長の「線区単位の経営指標を公表する」に重なります。
検討会では、有識者委員から「単に『鉄道を残す』でなく、地域全体として移動手段を確保する施策を考えたい」「乗客の極端に少ない線区は、現状のままで鉄道を維持するのは困難」などの意見が出されたそう。前編はここまで。後編では、国交省や滋賀県の近江鉄道の取り組みを披露します。ぜひご覧ください。
記事:上里夏生