ここは奈良県 三郷町(さんごうちょう)。

生駒山(標高642m)と信貴山(標高437m)の尾根沿いを結ぶ信貴生駒スカイライン(しぎいこまスカイライン)をはじめ、西信貴ケーブル(近鉄西信貴鋼索線)など、近畿日本鉄道(近鉄)の交通ネットワークで結ばれた山あり谷ありの絶景ルート。

ここ三郷町で2月28日~3月9日、埼玉工業大学の“動く教材” 日野レインボーIIベース自動運転AIバスが地元町民を乗せて走った。

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運転区間は、JR関西線(大和路線)三郷駅と、FSS35キャンパス(奈良学園大学 旧三郷キャンパス)を結ぶ約1.5km。

これまで、全国各地の鉄道系バス事業者や自治体らといっしょにテスト走行を重ねてきた埼玉工業大学 自動運転AIバスが、こんどは急勾配が連続する山道へと挑んだ。

想定以上の500人が試乗「人が運転しているみたい」

今回の三郷町 デジタル交通サービス実証実験では、長大(東京都中央区、代表取締役社長 野本昌弘)、奈良交通(奈良県奈良市、代表取締役社長:田中耕造)、住友電工システムソリューション(東京都文京区、代表取締役社長:鷲見公一)、アイサンテクノロジー(愛知県名古屋市中区、代表取締役社長:加藤 淳)、東海理化(愛知県丹羽郡大口町、代表取締役社長:二之夕裕美)、損害保険ジャパン(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:白川 儀一)、埼玉工業大学(埼玉県深谷市、学長:内山俊一)らが連携し、「次世代のデジタル技術を活用した交通サービス」の実装をめざし、一般参加者を乗せて、三郷駅~FSS35キャンパスを往復。

初日には、三郷町 木谷慎一郎 町長をはじめ、県議会・町議会議員などを乗せて走り、さらに一般参加者たちを乗せて急坂を往復。想定を超える500人以上の地元町民が乗り、「人が運転しているみたいにスムーズな走りだった」などの声が寄せられた。

近鉄グループ奈良交通がドライバー・遠隔監視者を担当

三郷町 デジタル交通サービス実証実験でのそれぞれの役割は次のとおり。

奈良県:実証実験実施主体
三郷町:実証実験実施主体、実証実験責任者
長大:実証実験現場責任者
奈良交通:ドライバー派遣、遠隔監視者派遣
アイサンテクノロジー:高精度3次元地図の作成、走行調律作業の実施
東海理化:遠隔監視システムの提供
損害保険ジャパン:自動運転リスクアセスメント
埼玉工業大学:車両提供、技術者派遣、テストドライバー派遣

各立場から自動運転バス社会実装に向けて議論

三郷町 木谷慎一郎 町長と、埼玉工業大学 自動運転技術開発センター 渡部大志 センター長(工学部情報システム学科 教授/画像認識工学研究室)も、この自動運転AIバスに同乗。

試乗後には、木谷町長や町議会議員たちと、アイサンテクノロジー・東海理化・埼玉工業大学らと自動運転バス社会実装に向けた情報共有会を開き、それぞれの立場から議論した。

三郷町担当者は「試乗車たちの4割に、自動運転バスに不安感を抱いていたけど、実際に試乗してみたらそうした不安が払拭でき、安心に変わったところに、今回の実証実験の手応えをまず感じている」という。

既存バス車両を自動化、全国の自治体や路線バス事業者が注目

埼玉工業大学の自動運転AIバスは、“生きた教材”としての大学研究材料でありながら、全国の路線バス事業者・各自治体などからのオファーで各地の実証実験走行に出向き、つねにアップデートを重ねている。

その最大の特長は、既存の路線バス車両 日野レインボーIIに、後付け自動運転AIシステムを搭載し、全国各地の路線バスルートをレベル2で走り通せるところ。

この後付け自動運転AIシステムという独自性から、全国の路線バス事業者が既存車両を自動化できることから注目し、全国各地の自治体・路線バス事業者から実証実験への打診があるという。

大学教材&スクールバスが全国各地でテスト走行

埼玉工業大学の 日野レインボーIIベース自動運転AIバスは、これまで首都高速道路直下を行き、GNSS(衛星測位システム)がうまく届かなかった川崎鶴見臨港バス路線テスト走行や、新宿中央通りトンネルの下を行く京王バス運行 都庁循環(CH01系統)などを、デッドレコニング(DR/自律航法)の性能向上などで想像以上に「なめらかな自動走行」を実現してきた。

こうした全国各地の実証実験を終えると、再び埼玉県深谷市 埼玉工業大学へ戻り、最寄り駅と大学を結ぶ自動運転スクールバスとして学生を送迎。学生たちの“生きた教材”としても活かされている。

―――そんな埼玉工業大学は、学内の自動運転技術開発センター所属研究者を倍増させ、研究・開発体制を大幅に強化する。

埼玉工業大学のエキスパートたちが加入、自動運転技術開発を強化

トヨタ プリウス、マイクロバスタイプの日野リエッセII、路線バスタイプの日野レインボーII などに、後付け自動運転AIシステムを搭載し、全国各地の路線バス事業者・自治体と走行実証実験を重ねてきた埼玉工業大学。

今後はレベル4対応の自動運転バスの開発に向け、研究者を増員し大学内に拠点をおく自動運転技術開発センターを強化。産学官連携で開発を推進していく。

<埼玉工業大学 自動運転技術開発センター 新体制>

渡部大志 センター長、工学部情報システム学科 教授/画像認識工学研究室
鯨井政祐 工学部情報システム学科 教授/ヒューマンインタフェース研究室
和田正義 特任客員教授
*田中克明 人間社会学部 情報社会学科 教授/知能情報システム研究室
*中村晃 工学部情報システム学科 教授/システム制御研究室
*本吉裕之 人間社会学部 情報社会学科 准教授/経営企画研究室
*望月義彦 工学部情報システム学科 講師/視覚情報処理研究室
( * 新メンバー)

AR動画開発技術なども組み合わせ観光支援も

埼玉工業大学は、観光アテンドルの開発も力を入れ、全国の各自治体で学生たちが開発したアテンドルが活躍。

こうしたAR動画やヴァ ーチャル・アイドルの開発技術も、自動運転AIバスと組み合わせて活用し、観光支援など多角的なサービス開発を手がけていく。

◆JR只見線 沿線の魅力をAR動画で発信! 埼玉工業大学 人間社会学部 情報社会学科が制作、学生がキャラをデザイン_埼工大アテンドルで全国地方自治体の観光コンテンツ支援を展開 加速
https://tetsudo-ch.com/12904408.html

◆埼工大 自動運転特設サイト
http://saikocar.sit.ac.jp/

◆埼玉工大、アイサンテクノロジーと自動運転の研究開発で連携協定を締結
https://www.sit.ac.jp/news/230406_1/

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