2000年以降、交通集積した品川

ここから本題の「都心部・品川地下鉄構想」。東京都の資料では、「東京メトロ南北線の分岐線(品川―白金高輪間)」と表記されます。本コラムも分岐線として紹介します。

分岐線の発想はいつ出たのか。鉄道計画に詳しい方は、国土交通大臣の諮問機関・交通政策審議会(交政審。2001年の中央省庁再編までは運輸政策審議会=運政審)が、10数年ごとに三大都市圏の鉄道整備の方向性を答申の形で公表することはご存じでしょう。

直近は2016年4月の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方」ですが、その一つ前、運政審の「運輸政策審議会答申第18号」には分岐線は記載がありません。

振り返れば18号答申当時、南北線を品川に伸ばす構想は表面化していませんでした(運政審答申2001年1月、南北線全通同9月)。

変ぼう遂げる品川駅

分岐線の新駅が地下に設けられる品川駅高輪口全景。正面がJR駅、右側が京急駅。駅前広場はいかにも手狭ですが、国土交通省は広場を2階建てにして、鉄道からバスやタクシーに乗り継ぐ交通結節点にする計画です(筆者撮影)

しかしその後、品川は大きく変わりました。2003年に東海道新幹線品川駅が開業。2013年には、リニア中央新幹線の東京側始発駅が品川に正式決定しました。

2015年にはJR東日本の上野東京ラインが開業して、常磐線列車の多くが品川始発になるなど、品川駅は東京都心南側の拠点ターミナルとして存在感を高めます。

さらに、2010年からは羽田空港が国際化(正式には再国際化)。品川は京急利用で羽田空港と直結し、世界と国内各地をつなぐ拠点駅として機能します。

都心部と品川駅のアクセス利便性向上

現在、品川駅に地下鉄の乗り入れはありません(都営浅草線につながる品川―泉岳寺間は京急本線です)。浅草線をのぞき、品川に一番近い地下鉄がメトロ南北線。先述の交政審答申には、「都心部・品川地下鉄構想の新設(白金高輪―品川)」が明記されました。

答申は、新線の整備意義を「六本木などの都心部と、リニア中央新幹線の始発駅・品川駅や国際競争力強化の拠点である品川駅周辺とのアクセス利便性の向上(大意)」とします。品川駅周辺とは、JR東日本が開発を主導する「高輪ゲートウェイシティ」を意味します。

白銀高輪から〝Ωルート〟で品川へ

分岐線の平面図。白金高輪から180度進行方向を変えて品川に向かいます。途中、都営浅草線高輪台駅をかすめますが、南北線側の接続駅は設けられません(資料:東京都市計画 都市高速鉄道第7号線 東京メトロ南北線の分岐線(品川~白金高輪間)計画)

分岐線のルートですが、都の資料によると、いったん白金高輪から南北線の次駅・白金台方向に西進し、そこから180度方向転換して品川にいたります。

分岐線の白金高輪―品川間は約2.8キロ。白金高輪駅付近の約0.3キロは、既設の南北線と同一ルートなので、都市計画変更区間は約2.5キロになります。延伸区間の線形は、ギリシャ文字になぞらえて「Ω(オメガ)形」とも表現されるようです。

品川駅ホームは1面2線

細かい点では、これまで分岐線の品川駅ホームはJRや京急と平行の南北方向か、それとも直角の東西方向かは未定でした。都の資料では、ホームは南北方向に設置されるようです。

資料では、新線の建設方法も明らかになりました。品川駅と白金高輪駅部は地上からトンネルを掘る開削工法、中間部は地中を掘り進むシールド工法を採用します。

品川駅は箱型トンネルで、幅約19~22メートル。ホームの両脇に線路を設ける島式1面2線構造です。

開削工法で建設される品川駅部。図面で見る限りホームは地下2階、コンコースなどは地下1階に設けられるようです(資料:東京都市計画 都市高速鉄道第7号線 東京メトロ南北線の分岐線(品川~白金高輪間)計画)

最近の地下鉄としては、非常にオーソドックスな工法といえるでしょう。着工や完成時期は資料への記載はありませんが、工期約10年と試算すれば、準備期間を考慮しても、2030年代半ば以降には南北線の品川乗り入れが実現しそうです。

品川駅から新幹線、リニア、羽田空港にGo!!

ここで分岐線の整備効果を考えましょう。品川駅は東海道新幹線やリニア、羽田空港へのアクセスポイントです。駅周辺には、品川インターシティや高輪ゲートウェイシティが広がります。

分岐線が開業すれば、東京都北区や相直の埼玉スタジアム線沿線から品川に乗り換えなしで直行できます。さらに、南北線は多くの地下鉄線と接続するので、各線から新幹線やリニアの利用が便利になります。

今後に関しては、都市計画案作成、環境影響評価書の作成、都市計画決定といった手順を踏んで工事着手になります。書き忘れましたが、分岐線整備を主導したのは東京都。新線を、国際都市・東京の競争力強化に役立てる考えです。